iPhone用アプリに好機を見出したソフトウエア開発者の参入が相次ぎ,App Storeで配信されるアプリは日々増え続けている。従来の携帯電話向けアプリはゲームが中心だったが,App Store上には音楽,教育,健康,金融など幅広いジャンルのアプリが集う。さらに個人向けアプリだけでなく,CRMやグループウエアなど業務向けも登場(図1)。その勢いはとどまる気配を見せない。

図1●App Storeで配信されているアプリの主なジャンル。
図1●App Storeで配信されているアプリの主なジャンル。
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 「これだけ優秀な端末を企業で使わない手はない。iPhoneとの連携で特徴を出しバックエンドで動くオラクルのサーバーの付加価値としていく」。日本オラクル製品戦略統括本部の西脇資哲製品戦略担当シニアディレクターはiPhone用アプリを手がける理由をこう説明する。

 米オラクルはiPhone 3Gが登場して間もなく,同社の業務分析ツールが示す各種データをiPhone上で表示する無料アプリの配信を開始した(図2)。日本でも間もなく配信する予定である。同社では将来,外部のシステムインテグレーターと共同で,iPhoneのGPS機能を利用した表示ツールの開発も検討している。ユーザーが立っている場所に合わせて,周辺の地図と訪問するべき顧客リストを表示するといった機能を実現したいという。

図2●日本オラクルが投入予定のビジネス分析ツール
図2●日本オラクルが投入予定のビジネス分析ツール
営業成績や在庫状況などをリアルタイムで参照できる。特定の表やグラフを“お気に入り”として登録する機能もある。

開発者を駆り立てるユーザー・インタフェース

 iPhoneの用途と可能性を業務用にまで広げた最大の要素が,タッチパネルによる軽快なユーザー・インタフェースだ。各ソフトウエア開発メーカーは工夫を凝らして,タッチパネルの操作性を生かしたアプリを生み出している。

 例えば,乗り換え案内アプリの「駅探エクスプレス」では,駅名を入力する際には,ソフト・キーボードで入力するのではなく,指を縦にスライドさせる操作で文字を選ぶ(図3)。「携帯電話向けに提供していたアプリをそのままiPhone向けに移植するのではなく,シンプルに簡単に動かせるようにした」(駅探の中村社長)。

図3●タッチパネルの機能を使ったUIの例<br>駅探エクスプレスでは,出発/行き先駅を決める際には,キーボードを使う代わりに,指を縦ににスライドさせて文字を選ぶ。例えば「ぎん」と文字を選ぶと,続いて「銀座」など駅名の候補が出てくる。
図3●タッチパネルの機能を使ったUIの例
駅探エクスプレスでは,出発/行き先駅を決める際には,キーボードを使う代わりに,指を縦ににスライドさせて文字を選ぶ。例えば「ぎん」と文字を選ぶと,続いて「銀座」など駅名の候補が出てくる。
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 タッチパネルだけでなく,iPhone 3Gが搭載する加速度センサーをファイル操作に活用するアプリも登場した。ユビキタスエンターテインメントのメモ作成ツール「ZeptoPad」は,作成したメモを相手と共有したい場合に,自分のiPhoneと相手のiPhoneを重ねて上下に振る。すると,加速度センサーが同じ振動を検知して,相手のiPhoneに無線LAN経由でデータをコピーする。