英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 フィンランドのノキアは2008年6月24日,Symbian OSを開発する英シンビアンの全株式を取得し,同時に「Symbian Foundation」を新設,全株式をSymbian Foundationに寄付すると発表した。Symbian Foundationは携帯電話会社やベンダー,サービス開発会社に対して,特許権使用料が要らない携帯電話プラットフォームを提供する。将来は,そのOSを構成するソフトウエアをオープンソース化していくという。

 Symbian Foundationは利益を追求しない非営利団体だが,ノキアがこの取り組みに7億9000万ドル(約866億円)も投資する背景には何があるのだろうか。そこには競合するプラットフォームの台頭と,ソフトウエアの急速なオープンソース化の流れがある。

オープンソース化の流れに乗る

 シンビアンが事業開始したのが1999年。米マイクロソフトのWindowsがコンピュータの標準OSになったように,Symbian OSを携帯電話の標準OSにしたいと夢見てきた。

 Symbian OSの市場占有率は高い。スマートフォン市場におけるSymbian OSのシェアは60%であり,端末のライセンス数も2000年の発売以来,既に2億台を超えている。Symbian OSに競合するプラットフォームといえばマイクロソフトのWindows Mobileだが,シェアは13%。カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「Black Berry」は約10%程度に止まっている。

 ただし,ここに来て新たなプラットフォームの台頭が著しい。例えば米アップルのiPhoneは洗練されたGUIを持ち,ソフトウエアの開発者から支持を受けている。米グーグルが中心になって設立したオープン・ハンドセット・アライアンス(OHA)から生まれたAndroidもよく話題に上る。LinuxをベースにしたAndroidはWebの利用に適したプラットフォームである。さらには米モトローラ,NEC,NTTドコモなどの企業が参加するLiMo Foundationもある。LiMoは,端末機種に依存しないLinuxをベースにした携帯電話用OSを実現している。

 こうした動きから言えるのは,携帯電話の世界でもソフトウエアはLinuxのようなオープンソースに向かっているという事実だ。

 私はSymbian Foundationが成功するには,ノキアやシンビアンが“オープン化”の持つ本当の意味をよく理解することが不可欠だと考える。

 シンビアンの上級取締役の一人は,昨年11月の英BBCのインタビューの中で,グーグルのAndroidは経験が不足していると酷評し,携帯電話用OSはロケット工学のようにずば抜けて質が高い技術でなければならないと断じていた。Symbian OS自体がオープンソース化していく中で,この発言は今となっては的外れに聞こえる。質の高さはもちろん重要だが,ソフトウエアのオープン化の流れの中では,高い開発力を持ったアプリケーション開発企業を味方につけることが何よりも重要だと私は思うからだ。それこそが,携帯電話のプラットフォーム競争の勝敗を決めるのではないだろうか。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 8月の北京オリンピックの報道を見ていて,なぜサッカーのワールドカップはオリンピックより成功を収めているのだろうと考えた。英語では“料理人が多すぎるとスープがまずくなる”ということわざがある。オリンピックは種目が多すぎて,サッカー・ワールドカップのように熱中する気持ちが拡散するのかもしれない。北京オリンピックの後,中国の人たちのオリンピックに対する好印象はどれぐらい継続するのだろうか。韓国では1988年のソウルオリンピックの後,なんとなく白けた時期があったと思う。