高校生の主人公「僕」と,3人の少女たちによる,数学をテーマにした小説風物語。2007年6月に発行された「数学ガール」の続編である。著者は本誌の連載でもおなじみの結城浩氏。
副題にある「フェルマーの最終定理」は,「3以上の自然数nについて,xn + yn = znとなる0でない自然数(x, y, z)の組み合わせがない」というもの。本書は,中学,高校で習う基礎的な数学から,この定理の証明をとりまく高度な数学の概念までを,うまく取り上げていく。読み終えるとフェルマーの最終定理がどのように証明されたかがよくわかる,見晴らしのよい場所に立てる。
物語は,主人公「僕」に対して,3人の少女たちが,絶妙にリードしたり,つまずいたりしながら進んでいく。読者は特別な注意を払わなくても,本書が扱うテーマをゆっくり,正確に学ぶことができるだろう。加えて,「僕」の教えたり,教わったり,考えたり,伝えたりといった,数学を楽しむに当たって欠かせない姿勢,態度も同時に学べる。数学と,その美しさへの興味さえあれば,前作を未読であっても,楽しく,心地よく読めるだろう。
数学ガール/フェルマーの最終定理
結城 浩著
ソフトバンク クリエイティブ発行
1890円(税込)