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記者のつぶやき

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「マスゴミ」と呼ばれ続けて

事実とその積み重ねで見えてくるもの

 しかし,本当にそうなのだろうか。友人たちにマスコミは本当に不要なのかと聞いてみると,次のような言葉が返ってきた。

友人A「お前らマスゴミは事実だけ報道していればいいんだよ」
筆者「…」

 正直,当初はこのぶっきらぼうな物言いにカチンときた。また,「事実だけ」という表現から「それ以外のことはすべて不要」という含みを感じ,不快感を覚えた。

 ただ,この発言をきちんと咀嚼(そしゃく)すれば,間違ったことは言っていない。

 マスコミの強みは,記者という肩書き1つでさまざまな話題の当事者,つまり一次情報に接しやすいところにある。一次情報からしか知り得ない事実を拾い上げることは,マスコミにしかできない最も重要な役割の1つだ。

 最近,デスク(副編集長)からも「分かりづらかったり,知られていないさまざまな事象についての仕組みを,fact(事実)の積み重ねによって明らかにするのが我々の仕事の本質」と言われた。マスコミの本質は事実や事実の積み重ねによって見えてくるもう1つの事実を報道するところにある。

 そう考えると,「ダブルスタンダード」に対する友人たちの厳しい批判は,マスコミに対する期待を裏返しにしたものと見なすこともできる。「ダブルスタンダード」の存在は,「fact(事実)」とその積み重ねというマスコミの本質を誤らせるものだからである。

 マスコミがダブルスタンダードに陥る誘惑には,例えば,以下のようなものがある。

 筆者は以前,ある取材先から出入り禁止を申し渡されたことがある。書いた記事が気に入らないというのだ。記事はこの取材先を批判するものだったが,内容に間違いはなかった。また,ある知り合いの記者は,取材先からその記者が所属する媒体への広告出稿を止められたことがある。同じく,取材先が記事の内容を気に入らなかったからだ。こちらも記事の内容に間違いはなかったという。

 「取材源を確保しておきたい」「広告出稿を維持させたい」---。事実を報道するという本質を貫くならば,こうした誘惑に負けてはならない。しかし,友人たちの指摘通り,マスコミがダブルスタンダードに陥る誘惑は,末端の記者の間にいくらでも散らばっている。

 この誘惑に負けないためには,堅い意志も必要だが,筆者は取材先との信頼関係の構築こそ重要と考える。取材先の主張したい自分たちの強みや抱えている課題などに耳を傾け,こちらからも取材先に情報を提供し,誠実に取材先の今ある姿を理解しようと努める。そうすれば,記者と取材先の間には一定の信頼関係が生まれる。その上での批判は,大抵の場合「書かれちゃったけど,事実だからしょうがないな」と取られることがほとんどだ。これが成り立たない場合,取材先の対応に問題がある場合もあるが,記者の取材姿勢に問題があることの方が多いのだろう。

 ダブルスタンダードの誘惑に負けない公平な報道をするには,記者たちの日ごろの取材姿勢によるところが大きい。難しいだろうが,堅い意志を持って継続的に一次情報に触れつつ,公平な視点で事実を報道し続けることを心がけるしかない。

(島田 昇=ITpro)  [2008/09/01]

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