成熟期を迎えている携帯電話業界に対する事業者の次の一手は何か──。7月22日から24日にかけて開催されたモバイル関連の展示会「ワイヤレスジャパン2008」に国内の携帯電話事業者のトップがそろい踏みし,その一端が見えてきた。

 携帯電話の加入者が1億人を超えた現在,これまでのような契約数の急激な伸びは期待できない。基調講演に立った携帯電話事業者各社の幹部は,成熟期を迎える携帯電話市場に対して,戦略を転換する方向性を鮮明にした。加入者の“量”を求める戦略から,ユーザーの満足度を向上する“質”の追求への転換だ。

携帯がユーザーの行動を支援

 具体的に見えてきた“質”の追求の例が,携帯電話へのエージェント機能の搭載だ。NTTドコモの山田隆持社長(写真1)は,「例えば,あらかじめ携帯電話に自分の通勤経路を設定しておくと,携帯電話がサーバーと連携して出発前にその経路の運行情報などを教えてくれる。こうした行動支援型サービスを,秋冬モデルの一部から始めたい」と語った。

 KDDIの小野寺正社長兼会長(写真2)もエージェント機能について言及。「携帯電話は人と人を結ぶパーソナル・ゲートウエイとしての役割から,ユーザーの状態や環境,行動履歴などの情報に基づいて個々のユーザーに最適な情報やサービスを提供するパーソナル・エージェントに変わる」とした。

写真1●NTTドコモの山田隆持社長
新たな取り組みを次々と紹介。(撮影:皆木優子)
写真1●NTTドコモの山田隆持社長<br>新たな取り組みを次々と紹介。(撮影:皆木 優子)
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●KDDIの小野寺正社長兼会長
3.9G戦略は明確には示さなかった。(撮影:皆木優子)
写真2●KDDIの小野寺正社長兼会長<br>3.9G戦略は明確には示さなかった。(撮影:皆木 優子)
[画像のクリックで拡大表示]

 携帯電話はユーザーが肌身離さず持ち歩く機器である。端末が搭載する認証機能やGPS機能を使えば,ユーザーの行動履歴や位置情報に応じた情報配信が可能になる。NTTドコモの山田社長は「携帯を使うことで個々人に合った情報をプッシュで配信できる。検索によってプル型で情報を得る今のインターネットを一段階進化させるられる」と指摘した。

 一方,NTTドコモとKDDIを追うシェア3位のソフトバンクモバイルと同4位のイー・モバイルは,“量”を追求する姿勢も崩していない。ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長(写真3)は,「第一ステップとして契約数を広げることが先決。そのために最も有効なのは料金を下げることだ」と説明。イー・モバイルのエリック・ガン社長兼COO(写真4)は「2台目端末やスマートフォン,データ通信カードなど新たな需要によって,2012年までに市場全体で3000万の純増が見込めると予想している」と述べた。

写真3●ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長
iPhoneの狙いについて言及。(撮影:皆木優子)
写真3●ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長<br>iPhoneの狙いについても言及した。(撮影:皆木 優子)
[画像のクリックで拡大表示]
写真4●イー・モバイルのエリック・ガン社長兼COO
通話料はまだ下がるとした。(撮影:皆木優子)
写真4●イー・モバイルのエリック・ガン社長兼COO<br>通話料はまだ下がるとした。(撮影:皆木 優子)
[画像のクリックで拡大表示]