本連載は,Windows Server 2008の導入に必要な知識と具体的な方法を紹介し,読者が効率的に,確実に同サーバーを導入する手助けをする情報を提供するものだ。

 第1回では,Active Directoryの移行について取り上げ,アップグレードの際に必要な情報提供を行った。今回からは連続して3回に分けて,Windows Server 2008の目玉機能の一つである「ターミナル・サービス(TS)」について取り上げる。ターミナル・サービスとは,リモート・デスクトップ接続によってサーバーに接続するクライアントに,仮想デスクトップ環境を提供するサービスである。

 Windows Server 2008のターミナル・サーバーでは,アプリケーションの画面だけ転送する「TS RemoteApp」やHTTPSを使ってターミナル・サービスを使用する「TSゲートウエイ」のような新機能が追加されているほか,既存の機能もさまざまな点で強化されている。まず今回は,ターミナル・サービスの導入準備について解説しよう。

1.ターミナル・サービスの構成

 ターミナル・サービスの各機能の変更点について考える前に,ターミナル・サービスを構成するために,どのようなサーバーが必要になるか理解しよう。ターミナル・サーバーを何台使ってサービスを構成するかによって,必要となるサーバーの種類が変わる。

 ターミナル・サーバーを冗長化せずに一台だけで構成する場合,最低以下の2種類のサービスをインストールしたサーバーがあれば,ターミナル・サービスを構成できる。

(a)ターミナル・サービス
(b)TSライセンス・サービス

 この2種類のサービスは,1台のサーバー上にインストールできる。

 ターミナル・サーバーを複数台で構築する際には,「TSセッション・ブローカ・サーバー」や「ファイル・サーバー」といった他のサーバーも上の種類のサーバーに加えて構築する必要がある。具体的には,以下のようなサービスをインストールしたサーバーが必要になる。

(a)ターミナル・サービス
(b)TSライセンス・サービス
(c)Active Directoryドメイン・サービス
(d)TSセッション・ブローカ・サービス
(e)負荷分散サービス
(f)ファイル共有サービス

 負荷の大きくないTSライセンス・サービスやTSセッション・ブローカ・サービスなどの複数のサービスは,1台のサーバーにインストール可能である(図1)。

図1●ターミナル・サーバーが複数台時の構成
図1●ターミナル・サーバーが複数台時の構成

2.ターミナル・サーバーのインストール

2.1.ターミナル・サーバーの各役割

 それでは,ターミナル・サービスを構成する各サーバーについて,順に役割を説明しよう。まず,中心となるターミナル・サーバーである。

 ターミナル・サーバーは,各ユーザーが実際に作業を行うサーバーであり,仮想デスクトップをクライアントに提供するサーバーである。ターミナル・サービスのインストールは,Windows Server 2003では「Windows コンポーネントの追加と削除」から行っていたが,Windows Server 2008では他のサービスと同様に「サーバー・マネージャ」から行うように統一された。

 「サーバー・マネージャ」からのインストール手順は,以下の通りである。