総務省は7月4日付で大規模な組織改編を実施し,これに伴う人事異動を発令した。最大の変更点は新たに「情報通信国際戦略局」を設置し,これまで2局体制だった情報通信関連局を3局体制にしたことだ。これにより,ICT(information and communication technology)産業の国際競争力強化や,通信と放送の融合・連携に対応した制度改正などに取り組む。

 2010年に国会に提出──。タイムリミットまで残り2年あまりとなった「情報通信法」の実現に向け,総務省が動きを加速させた。組織改編で新たに設置した「情報通信国際戦略局」を中心に,準備を急ぐ。

図1●総務省の情報通信関連局は3局体制へ<br>7月4日付で新設の局として「情報通信国際戦略局」を設置し,総務省の情報通信関連の政策・行政を3局体制に移行した。「情報流通行政局」は従来の情報通信政策局の所掌事務を変更し,郵政行政局を加えて改組・名称変更したものである。
図1●総務省の情報通信関連局は3局体制へ
7月4日付で新設の局として「情報通信国際戦略局」を設置し,総務省の情報通信関連の政策・行政を3局体制に移行した。「情報流通行政局」は従来の情報通信政策局の所掌事務を変更し,郵政行政局を加えて改組・名称変更したものである。
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 同局の役割は,(1)総合政策,(2)技術政策,(3)国際政策の3分野(図1)。具体的には,(1)がICT産業の国際競争力強化や,通信・放送の融合・連携,インターネット関連の国際戦略の立案。(2)は関連する技術開発や標準化活動の強化,(3)は海外動向調査や協働プロジェクトの展開などが該当する。

 『国際戦略』と一続きになっている局の名称からすると「国際系」組織の印象が強い。ただ実際には,業務はICT産業の国際競争力強化から国内の通信政策にかかわるものまで多岐にわたる。「とらえ方としては,『国際』と『戦略』の両方を担うとするのが実体に近いだろう」(関係者)。

 その『戦略』の柱になるのが,(1)の融合法制への対応,つまり情報通信法である。2009年末に情報通信審議会総会の答申を経て,2010年の通常国会に法案を提出する計画で,総務省にとっては喫緊の課題といえる。

2009年末答申へ向け猛ダッシュ

 情報通信法は,電気通信事業法,放送法といった現行の“縦割り”になっている通信・放送両分野の法制を,インフラやサービス,コンテンツといった“レイヤー別”に整理した新法体系である。ただ,制度改正に向けた準備は,まだ途上である。7月初旬の時点では,情報通信審議会情報通信政策部会の検討委員会が取りまとめた「通信・放送の総合的な法体系について(中間論点整理)」に対する意見を募集している段階である。

 新設した情報通信国際戦略局は,この作業をスピードアップさせる。実際には同局の筆頭課である情報通信政策課がその役割を担う。課をとりまとめる課長ポストには,前総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課長の谷脇康彦氏が就く。

 谷脇課長は,2010年に向けた競争ルール見直しのロードマップ「新競争促進プログラム2010」を取りまとめた人物。現状認識として,「放送,通信といった枠組みは必要かもしれないが,それを超える動きが出てきている。一本筋の通った戦略を作っていかなければならない」とし,「融合法制をきちんとやっていくのが(同課の)大きな仕事の一つ」と説明する。

 通信事業者に対する規制当局は,これまで通り総合通信基盤局だが,通信事業者の将来の方向性に関しては情報通信国際戦略局も今後大きな影響力を持つことになる。