NTTドコモと日本通信が,レイヤー3による網の相互接続で合意した。日本通信がエンドエンドの料金設定権を持ち,帯域幅に応じた接続料をNTTドコモに払う。接続料は10Mビット/秒当たり月額約1500万円で,1ID当たり月額約110円の付加料金がかかる。

 NTTドコモが今回設定した接続料については,「かなり安い」と評価する声が多い。通信方式や基地局数などが根本的に異なるので一概に判断できないが,同じ帯域幅課金でウィルコムがMVNO(仮想移動体通信事業者)向けに提供する「無線IP接続サービス」は9Mビット/秒で月額2900万円から。NTTドコモの接続料はこの半額だ。

 携帯電話・PHS事業者とMVNOの契約形態には「卸」と「相互接続」の2種類がある。ウィルコムの無線IP接続サービスは事業者が一定の利益を上乗せできる卸契約だが,NTTドコモが今回設定した接続料は利益を上乗せしにくい相互接続契約である。

 特に第二種指定電気通信設備の規制対象となっているNTTドコモの場合,電気通信事業法第34条に基づき,接続料は「適正な原価に適正な利潤を加えたもの」でなければならない。文面こそ「適正な利潤」となっているものの,「実態は設備費用に運用管理コストを加えた原価提供に近い」(業界関係者)という。

 かつてNTTドコモと日本通信は,レイヤー2の相互接続で総務大臣の裁定にまで発展した経緯がある。裁定で示された考え方は今回の相互接続にも当てはまる。日本通信の主張をほぼ認めた裁定にNTTドコモが忠実に従ったと見る向きが多い。

150時間分の利用権を8月から販売

 日本通信はNTTドコモとの相互接続を7月末に完了し,HSDPAのデータ通信サービス「b-mobile3G」を始める(図1)。第1弾として,データ通信端末と一定期間の通信利用権をパッケージ化した製品「b-mobile3G hours150」を8月7日から販売する。hours150では利用開始日から480日(約16カ月)以内であれば,累計150時間分のデータ通信を必要に応じて利用できる。出張時や外出時など,週に数回,1回当たり1~2時間程度利用するユーザーに向くという。価格はオープンで,市場推定価格は3万9900円である。

図1●NTTドコモと日本通信のレイヤー3接続の概要<br>10Mビット/秒当たり月額約1500万円という接続料は安いという意見が多い。日本通信は今回の相互接続に基づき,3Gのデータ通信サービス「b-mobile3G hours150」を8月7日に開始する。
図1●NTTドコモと日本通信のレイヤー3接続の概要
10Mビット/秒当たり月額約1500万円という接続料は安いという意見が多い。日本通信は今回の相互接続に基づき,3Gのデータ通信サービス「b-mobile3G hours150」を8月7日に開始する。
[画像のクリックで拡大表示]

 端末はmicroSDカードのリーダー/ライター機能を搭載した中国ZTE製のUSBタイプを利用する。NTTドコモのMVNOで,端末の独自調達によるサービス提供は初めてになる。

 これは総務省のMVNO事業化ガイドラインの「電気通信事業法や電波法で定める技術基準を満たしていれば端末を自ら調達できる」とする規定を活用したもの。日本通信はコストを重視して海外メーカーから独自調達した。さらにスマートフォンや携帯電話,電子書籍の調達も検討しており,「10社以上の海外メーカーと交渉中」(CMO兼CFOの福田尚久・常務取締役)。端末の拡充と並行して,法人向けなど複数製品/サービスの投入を計画する。

 接続約款の公表を義務付けられているNTTドコモは,今回の相互接続をメニュー化して7月中にも公開する。今後は他のMVNOも日本通信と同じ条件で利用できるようになる。NTTドコモの設備を活用したデータ通信サービスが増えると予想される。