NTT東日本は,7月30日にNGN(次世代ネットワーク)によるFTTHサービス「フレッツ 光ネクスト」の提供エリアを,東京都の6区に拡大した。3月の商用化時点ではトライアルと同じ地域でしか利用できなかったが,今後順次提供エリアが広がる。計画通りだがそのペースは遅い。

 7月末でフレッツ 光ネクストの提供エリアは,千代田区,港区,品川区などをカバーする39局の収容エリアに広がった。NTT東日本は今後も段階的にNGN網を拡張し,都下23区内は9月中にもNGN網の展開を完了する予定。並行して首都圏3県から順次エリアを広げる(表1)。

表1●NTT東日本の「フレッツ 光ネクスト」の提供開始予定
2008年中の予定を示した。年度内の予定も公表している。記載した市区内でも一部利用できない地域がある。
提供予定 東京 首都圏3県(神奈川,千葉,埼玉)
7月 千代田区,港区,品川区,世田谷区,新宿区,江東区 ──
8月 中央区,渋谷区,目黒区,大田区,台東区,墨田区,中野区,練馬区,杉並区,文京区,豊島区 横浜市,千葉市,さいたま市
9月 葛飾区,江戸川区,板橋区,荒川区,北区,足立区 川崎市
10月 稲城市,国分寺市,国立市,狛江市,三鷹市,小金井市,小平市,清瀬市,西東京市,調布市,府中市,立川市,武蔵野市,東久留米市,東村山市 横須賀市,成田市,船橋市,戸田市,志木市,上尾市,新座市,川口市,朝霞市,鳩ヶ谷市,蕨市,和光市
11月 多摩市,八王子市,日野市 綾瀬市,鎌倉市,茅ヶ崎市,藤沢市,柏市,越谷市,三郷市,春日部市,草加市,八潮市
12月 町田市 三浦市,相模原市,市川市,ふじみ野市,熊谷市,所沢市,川越市,富士見市
提供予定 関東・中部の6県(茨城,栃木,群馬,山梨,長野,新潟) 東北6県(宮城,福島,岩手,青森,山形,秋田) 北海道
7月 ── ── ──
8月 ── ── ──
9月 ── ── ──
10月 新潟市,仙台市 ── ──
11月 水戸市,つくば市,宇都宮市,前橋市,高崎市,太田市,長野市 福島市 ──
12月 甲府市 盛岡市,青森市,山形市,秋田市 札幌市

 ただ,このエリア展開計画では,東日本地域の県庁所在地16都市は年内にカバーするものの,そのほかの周辺都市への展開はスローペースに見える。首都圏でも,千葉県浦安市や神奈川県大和市といった比較的大きな都市で2008年中はフレッツ 光ネクストを利用できないなど地域によって差異がある。東日本エリア全体を対象にしたフレッツ 光ネクストの本格的なプロモーションを始められるのは2009年以降となりそう。NTTは「2012年度末までにFTTH回線を地域IP網からNGN網にすべて収容替えする」というグループ目標を掲げたが,達成の道のりは厳しいものになりそうだ。

対応ISPはまだBフレッツの4割以下

 光ネクストの提供エリア拡大が一気に進まない背景には,最大の用途であるインターネット接続サービスを提供する事業者(ISP)の対応状況が完全には整っていないことがある。

 NTT東日本は,「原則的に,NGN対応エリアで新規にFTTHに加入するユーザーにはフレッツ 光ネクストを提供する」スタンス。将来の収容替えで発生する移行コストを抑えるために,できるだけ新規ユーザーは光ネクストに収容したいというのがその理由だ。

 しかし,地域IP網と相互接続するISP約400社のうち,NGN網にも新たに相互接続点を設置し,光ネクストに対応したISPはまだ約140社。大手はほとんど対応済みとはいえ,全体の4割以下に過ぎない(注)。

注:NTT東日本は,フレッツ光ネクストの対応ISPとして同社のサイトに未掲載であっても,「ほとんどの場合,NTT東日本のNGN網と相互接続済みの『ISP向けローミング事業者』を経由して,サービスの提供が可能な状態にある」(広報室)としている。ローミング事業者の対応状況については,Bフレッツに対応する事業者数66社に対して,フレッツ光ネクストは62社が相互接続済みである。

 提供エリアを急に広げれば,NGNに未対応のISPを利用するユーザーが新たにFTTH回線を使い始める際にISPを乗り換えなくてはならなくなる。NTTとしてはこれを強要はできない。「当面,光ネクストの提供エリアでもBフレッツを併売し,同じISPを使えるように対応するしかない」(NTT東日本)という。Bフレッツを併売する期間が長引くほど,将来の移行コストは積み上がり,完全移行に向けたハードルは高まることになる。

■変更履歴
対応ISPについて,「注」として情報を追加しました。 [2008/09/29 19:25]