NTT東日本は,7月30日にNGN(次世代ネットワーク)によるFTTHサービス「フレッツ 光ネクスト」の提供エリアを,東京都の6区に拡大した。3月の商用化時点ではトライアルと同じ地域でしか利用できなかったが,今後順次提供エリアが広がる。計画通りだがそのペースは遅い。
7月末でフレッツ 光ネクストの提供エリアは,千代田区,港区,品川区などをカバーする39局の収容エリアに広がった。NTT東日本は今後も段階的にNGN網を拡張し,都下23区内は9月中にもNGN網の展開を完了する予定。並行して首都圏3県から順次エリアを広げる(表1)。
表1●NTT東日本の「フレッツ 光ネクスト」の提供開始予定 |
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ただ,このエリア展開計画では,東日本地域の県庁所在地16都市は年内にカバーするものの,そのほかの周辺都市への展開はスローペースに見える。首都圏でも,千葉県浦安市や神奈川県大和市といった比較的大きな都市で2008年中はフレッツ 光ネクストを利用できないなど地域によって差異がある。東日本エリア全体を対象にしたフレッツ 光ネクストの本格的なプロモーションを始められるのは2009年以降となりそう。NTTは「2012年度末までにFTTH回線を地域IP網からNGN網にすべて収容替えする」というグループ目標を掲げたが,達成の道のりは厳しいものになりそうだ。
対応ISPはまだBフレッツの4割以下
光ネクストの提供エリア拡大が一気に進まない背景には,最大の用途であるインターネット接続サービスを提供する事業者(ISP)の対応状況が完全には整っていないことがある。
NTT東日本は,「原則的に,NGN対応エリアで新規にFTTHに加入するユーザーにはフレッツ 光ネクストを提供する」スタンス。将来の収容替えで発生する移行コストを抑えるために,できるだけ新規ユーザーは光ネクストに収容したいというのがその理由だ。
しかし,地域IP網と相互接続するISP約400社のうち,NGN網にも新たに相互接続点を設置し,光ネクストに対応したISPはまだ約140社。大手はほとんど対応済みとはいえ,全体の4割以下に過ぎない(注)。
注:NTT東日本は,フレッツ光ネクストの対応ISPとして同社のサイトに未掲載であっても,「ほとんどの場合,NTT東日本のNGN網と相互接続済みの『ISP向けローミング事業者』を経由して,サービスの提供が可能な状態にある」(広報室)としている。ローミング事業者の対応状況については,Bフレッツに対応する事業者数66社に対して,フレッツ光ネクストは62社が相互接続済みである。
提供エリアを急に広げれば,NGNに未対応のISPを利用するユーザーが新たにFTTH回線を使い始める際にISPを乗り換えなくてはならなくなる。NTTとしてはこれを強要はできない。「当面,光ネクストの提供エリアでもBフレッツを併売し,同じISPを使えるように対応するしかない」(NTT東日本)という。Bフレッツを併売する期間が長引くほど,将来の移行コストは積み上がり,完全移行に向けたハードルは高まることになる。
対応ISPについて,「注」として情報を追加しました。 [2008/09/29 19:25]