情報通信法の制度設計の在り方を議論している情報通信審議会の「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会」の検討作業が,第2段階に入った。制度の見直しに向けた検討課題(アジェンダ)案を作成し,2008年9月5日に開催される第7回会合で審議する。同日の会合でアジェンダを確定させ,今後の検討作業に優先順位を付ける。

 検討委員会はそれまでの審議結果をまとめた「中間論点整理」に対する意見募集を,2008年6月14日から7月14日まで行った。その結果を7月25日に公表するとともに,8月1日に開催された第6回会合で報告した。検討委員会が今後の検討作業に優先順位を付けることになった背景には,この意見募集の結果があった。

 検討委員会は中間論点整理で,九つある通信・放送関連法をレイヤー(階層)別に組み替えて一本化する情報通信法について,(1)法体系全体,(2)伝送設備・伝送サービス,(3)コンテンツ,(4)レイヤー間やプラットフォームなどの規律──といった項目に分けて,今後の検討の方向性を示した。意見募集の結果をみると放送関係者から,反対意見が相次いだ。「メディアサービスの類型化などを通じて,番組内容への行政の直接的な関与を認めることになるため,地上波放送のレイヤー別法体系への転換に反対」(日本民間放送連盟),「地上波放送の基幹放送という概念を維持すべき」(日本テレビ放送網)というのが,代表的な反対意見である。

 こうした反対意見に対して検討委員会の第6回会合では複数の委員から,「法体系を一本化して新たなビジネスを生み出しやすくするといったメリットが,依然として理解されていないのは非常に残念だ」,「メリットを理解してもらわないと,今後の議論が進められない」といった意見が出た。最終的には,反対している人を説得するよりも,現時点でおおむね支持されている部分から先に議論を進めることにした。

 おおむね支持されている部分とは,(1)伝送設備・伝送サービス,(2)視聴者保護──などの規律の在り方である。例えば伝送設備・伝送サービスでは,「通信・放送の区分にとらわれない柔軟な電波の利用を可能にする」,「無線局における迅速な事業者選定や周波数分配ができるようにする」といった方針が示されている。反対意見が多いコンテンツ規制の在り方やメディアサービスの類型化といった部分には,当面踏み込まない意向である。