会社の同僚には教えていないけど,実は自分のサイトを持っているという人は想像以上に多いようです。たしかに自分のサイトのURLを誰にも彼にも教えてまわったら,仕事の愚痴やこっそり楽しんでいる趣味のことなんか書けません。

 ただ,サイトは持っているんだけど日々の忙しさにかまけて,数カ月,あるいは数年間にわたって更新もせず放置状態,という人も少なからずいらっしゃることでしょう。せっかくの夏休み,PCに向かってカタカタやるのはどうかとも思いますが,まとまった時間が取れるのも事実。久々にサイトのリニューアルでもしてみてはいかがでしょうか? 1週間くらいでできるというお手頃な感覚を大事に,今時っぽいサイトの作り方,リニューアルのしかたを考えてみます。

 まずはあなたが開設したサイトを,ブラウザで開くことから始めてください。そこに見えたものが,自分でとても満足できるものならば,この記事はきっと何の役にも立ちません。もし自分のサイトに何かしらの不満を感じたら,ひょっとしたら役に立つことが書かれているかもしれません。

第1ステップ●“器”はこのままでいいのか

 古くは自分でサイトを作るといえば,HTMLですべてを手書きするということでした。今やHTMLを手書きするなんていうのは,よほど探求心が旺盛な趣味人か,サイト構築を生業とするIT企業のプログラマくらいしかしません。Webデザイナーと呼ばれる人たちはAdobe Dreamweaverのようなサイトデザイン・ツールを使います。一般の人たちの多くは,HTMLを自分で書くということはせず,ブログ・システムを利用するという方向に進んでいます。

 サイトという“器”を作ることが目的なのか,はたまたその器に盛り込む“料理”ともいえるコンテンツを重視するのか。ここが大事なポイントです。「サイトのデザインをリニューアルしよう!」と言われても,その作業自体が面倒くさいというのであればブログに引っ越しするのが一番です。引っ越しをすれば,自分で器を作って整えるという作業からは解放されます。

 自分のサイトで扱う話題が限定的である場合は,同種の話題を扱うSNSへ引っ越すのも手でしょう。また情報の集積地として運営している場合は,HTMLによる手書きからWikiにシステムを変更して,閲覧者にも修正や加筆を可能にするといったことも視野に入れて検討するのもいいかもしれません。

 器に盛る“料理”であるコンテンツ内容に注力したいのであれば,一からHTMLを書き起こしてCSSを勉強し,ページを増やすたびに試行錯誤で数時間を費やすのは非常にもったいないことです。意地を張らずにレンタルを検討しましょう。

 さてここで選択肢はいくつかに分かれていきます。例えばブログ・システムに切り替えようと思ったときには,以下のような選択肢があります。

  1. プロバイダなどのレンタル・システムを使う
  2. レンタルサーバーにオープンソースのシステムを導入する
  3. 自宅サーバーを立ち上げてオープンソースのシステムを導入する

 上のほうが手間がかかりませんし,セキュリティ的にも安全です。順に説明してみましょう。

 まず,レンタル・システムです。言うまでもなくブログはあちこちで無料で借りられます。プロバイダが提供するものの場合は,自分がそのプロバイダと契約していれば無料で利用できることがほとんどです。自分が契約していないプロバイダが提供するブログ・サービスでも,無料から月額数百円のコンテンツ利用専用会員になることで利用が可能になります。ほとんどのレンタル・ブログはデザイン・テンプレートを数十~数百種用意していますので,同一システムであっても,ある程度のオリジナリティは出せます。SNSやWikiも無料で使用できるところがいくつかあります。

 2と3の方法は設置する場所が違うだけで,利用するシステムは同じものになります。設置するブログ・システムあるいはブログ機能を内包したCMSには「Drupal」,「WordPress」,「XOOPS」あるいはXOOPSから派生した「XOOPS Cube」,「phpBB」,「Joomla!」などがあります。なお,この種のソフトの定番とも言われる「Movable Type」は商用がメインながら,2007年末にオープンソース化計画が開始されて「Movable Type Open Source」というバージョンが配布されていてGPLライセンス下での利用が可能になっています。

 Wikiシステムとしては,「MediaWiki」や「FreeStyle Wiki」,「PukiWiki」,SNSとしては「OpenPNE」などがあります。

 こうしたシステムを自分で導入して利用するには,稼働プラットフォームとなるLinux(一部はWindowsでも可)とApache,PHPやPerlといった開発言語,MySQLなどのデータベースの設置や設定についての知識が必要です。すでにOSやApache,データベースの環境が整っているという意味ではレンタルサーバーを利用するのが簡単です。夏休みの間にネットワークとLinuxの知識も勉強するぞ!という向きには,丁度いい教材かもしれません。

 HTMLやCSSを勉強したい,あわせてPHPやRubyでWebプログラムも勉強したい,データベースやLinuxだって理解したいという知識欲旺盛な人にとってレンタルサーバーは宝の山です。HTMLやCSSを極めたいという人の中には,サイト・デザインを極めたいという人よりも,デザインも含めてネットワーク全体について興味を持つ人が多いように思います。夏の間にHTML/CSSだけでなく,その裏側についても勉強してみるというのはいかがでしょう。

 3の自宅サーバーについては安易に構築と公開を推奨する書籍やインターネット上の記事をたまに見かけますが,レンタルサーバーに比べるとセキュリティ面で相応にリスクがあると考えてください。正しく設定できていない自宅サーバーは外部からの侵入やSPAMメール送信の踏み台に利用されてしまい社会的に迷惑です。管理に自信が持てないのであれば,家庭内サーバーにとどめて,学習専用環境にしてください。しかしきちんと管理できるのであれば,レンタルサーバーでは触れられないコアな部分まで含めて,Web環境を設定したり構築できます。

 「ブログ,SNS,Wikiも悪くないけど,それでも私はHTMLでページを書き続ける!」という方,実にいい覚悟です。実際にはブログ・システムなどを利用していても,HTMLやCSSについての基礎知識は必要です。デザイン・テンプレートもお仕着せのものではなく,自分で改良して作っていきたいとなればHTML/CSSについての知識は欠かせません。次のステップに進んでください。