企業ネットワークをインターネットに接続することになった。あなたは,インターネット接続用ルーターのルーティング・テーブルの管理を任されている。以下の選択肢から,社内ネットワークをインターネットに接続する方法として,最もルーターに負荷をかけず,かつ,管理者の設定・管理の手間をかけずに済む設定を選びなさい。なお,企業ネットワーク内のすべてのパソコンにはプライベート・アドレスが割り当てられており,インターネット接続用ルーターでアドレス変換機能を使ってインターネットに接続している。また,プロバイダからインターネット接続用ルーターのインターネット側ポートにグローバル・アドレスが固定で一つ付与されているとする。

ルーティング・テーブルの管理

[選択肢]
a. インターネット接続用ルーターとプロバイダのルーターの間でRIPを動かして,インターネット内のネットワーク情報と企業内のネットワーク情報を交換する
b. インターネット接続用ルーターに,インターネットにあるすべてのネットワークをスタティック・ルートとして設定する
c. インターネット接続用ルーターに,インターネットあてのパケットの転送先をプロバイダのルーターとしたデフォルト・ルートを設定する
d. プロバイダのルーターに,企業ネットワークにあるすべてのパソコンのアドレスをスタティック・ルートとして設定してもらう
e. 企業ネットワーク内のパソコンに,プロバイダのルーターのアドレスをデフォルト・ゲートウエイのアドレスとして設定する

[解説]
 問8の正解は,選択肢cの「インターネット接続用ルーターに,インターネットあてのパケットの転送先をプロバイダのルーターとしたデフォルト・ルートを設定する」です。

 企業ネットワークをインターネットに接続するときは,適切なルーティング手法をもってインターネットとつなぐ必要性が出てきます。この問題では,なるべくルーターに負荷がかからず,管理者の管理負荷もかからない方法を選びます。

 選択肢aのように,RIP(routing information protocol)などのダイナミック・ルーティングを使ってプロバイダのルーターと経路情報を交換するのは,現実的ではありません。インターネットの経路情報は25万個以上あり,この大量の経路情報を企業で使われているルーターに持たせるのは無理があります。万一,経路情報を保持できたとしても,ルーターに大きな負荷がかかります。

 選択肢bのように,ルーターにインターネットにあるすべての経路情報をスタティック・ルートとして設定するのも現実的ではありません。スタティック・ルーティングは,管理者が手動で経路情報を一つずつ設定する方法であり,25万を超える経路情報を一つひとつ設定するのは無理といっていいでしょう。

 選択肢cは,インターネット接続用ルーターに,インターネットあての通信をする際のデフォルト・ルートを設定する方法です。「デフォルト・ルート」とは,ルーティング・テーブル内に該当する経路情報がなかったときに,パケットの転送を任せるルートのことです。一般的な企業ネットワークでは,プロバイダのルーターをデフォルト・ルートの転送先として指定し,自分の知らないあて先(インターネットあて)のパケットの転送処理をプロバイダのルーターに任せます。こうすることで,ルーターの処理負荷と管理者の管理負荷を軽くすることができます。よって,この選択肢cが正解です。

 選択肢dの「プロバイダのルーターに,企業ネットワークにあるすべてのパソコンのアドレスをスタティック・ルートとして設定してもらう」という方法は,非現実的です。ルーターは,ネットワーク同士を接続する機器であり,あて先ネットワーク・アドレス単位で経路情報をルーティング・テーブルに設定するのが通例です。仮にパソコンに割り当てたアドレス一つひとつをルーティング・テーブルに設定するという運用をした場合,社内ネットワークにパソコンが追加されるたびにそのアドレスをプロバイダに知らせる必要があり,管理者の管理・運用負荷が高くなります。それにこの問題では,そもそもパソコンにはプライベート・アドレスが割り当てられており,プライベート・アドレスを使った経路情報をインターネット上のルーターに設定することはできません。

 選択肢eの「企業ネットワーク内のパソコンに,プロバイダのルーターのアドレスをデフォルト・ゲートウエイのアドレスとして設定する」も間違いです。パソコンのあるネットワークとプロバイダのルーターがあるネットワークは別ネットワークになります。こうするとパソコンは,デフォルト・ゲートウエイのMACアドレスが解決できずに,パソコンからインターネットあての通信はできません。

 以上より,最もルーターの負荷をかけず,かつ,管理者の設定・運用の手間を小さくできるのは,選択肢cになります。