データやアプリケーションは個々の端末のディスク内ではなく,遠く向こうの雲の上から降りてくる――。そんなコンピューティング環境の世界を表した言葉が,“クラウド・コンピューティング”。Googleをはじめ, Yahoo!, Amazon.com, eBay, Microsoftが,このクラウドを利用してさまざまなサービスを提供している。その分野は,検索エンジン,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス),メール,電子商取引,企業向けアプリケーション・サービスなどと広範だ。

 増え続ける膨大なデータを扱うため,各社は世界各地に巨大データセンターを持ち,それぞれを日々拡張させているのだが,その実体はあまり公表されていない。と言うのも,この手の情報は,企業の発表資料でもあまり触れられることがなく,入手しづらい。とりわけ多くが興味を持つGoogleの場合,IR(投資家向け広報)資料に情報をわずかばかり出している程度だ。

データセンターは重要な戦略事業

 いろいろ疑問に思って調べてみたのだが,データセンターの業界誌,Data Center Knowledgeの記事を読んでみて,その疑問が氷解した。記事によると,Googleはデータセンターを重要な戦略事業ととらえ,同社の競争力維持のため,その規模や消費電力といった詳細の公表を控えている。競合企業にこちらの手の内を読まれてしまうからだ。そのため同社は,LLC(合同会社)を介してデータセンター事業を運営するなど,さまざまな施策で機密保持に努めているという。

Googleのデータセンター設置地域</a>。Data Center Knowledge掲載の情報をもとに,Google Mapで表示(作成は,サーバー管理技術/サービスを手がけるPingdom)
写真1●Googleのデータセンター設置地域。Data Center Knowledge掲載の情報をもとに,Google Mapで表示(作成は,サーバー管理技術/サービスを手がけるPingdom)
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 同記事はこれまで同誌が掲載してきた記事のエッセンスを抽出したものという。それによると,同誌が今把握しているGoogleのデータセンターは,主要なものだけで米国内に12カ所,建設中の施設は3カ所ある。欧州では,少なくとも5カ所の主要施設あり,現在建設中のものが2つあるという。Googleは2007年に数カ所の施設建設計画を明らかにしたが,それより古い重要拠点の多くについては公表しておらず知る人は少ない。そして,こうした主要拠点以外のものも含めるとGoogleのデータセンターは少なくとも30カ所以上にあるという(写真1)。

 GoogleはIR資料サイトに,米国3カ所のデータセンター建設計画を掲載している。2007年4月にサウスカロライナ州で,5月にオクラホマ州で,6月にアイオワ州で,それぞれの州知事と共同発表したときの資料だ。それぞれで6億ドルの資金を投入し,現地での雇用も促進させる計画という。

東京ドーム100個分以上の土地を購入

 InformationWeekの記事がこのうち,アイオワのデータセンターについてレポートしており,建設中の写真も掲載している。このアイオワの施設は,Council Bluffsという地域の,55エーカーの敷地(東京ドーム5個分)にあり,2009年の稼働を予定している。記事によると,Googleはこの近くに130エーカーの土地も購入していて,データセンターの拡張あるいは関連施設の建設を考えているようだ。

 さらにGoogleはその南側の地域に1000エーカーの土地を購入しているという(1000エーカーは東京ドームの87個分)。この土地については,Googleは用途を明らかにしていないが,同記事の記者は,おそらく風力発電かトウモロコシの生産に使うのではないかと推測している。突拍子もないような話だが,確かにGoogleの企業情報ページを見ると,同社が環境対策に強く関心を持っていることが分かる。こうした取り組みは,データセンター電力の代替エネルギー化,あるいはカーボンオフセットにもつながる。同氏の話はあながちうそとは言いきれないのかもしれない(InformationWeekの記事)。