システムインテグレーションや受託ソフト開発の会計処理への適用を2009年4月に控え,IT業界の最大の経営課題になっている「工事進行基準」。本書は工事進行基準の基本を学べる入門書だ。ソフトウエア業すなわちシステムインテグレータ向けに特化した内容なので,IT業界の関係者なら実務に即して工事進行基準を理解できる。

 著者も述べている通り,工事進行基準の提供は単なる会計処理上の問題でなく,インテグレータにとって経営上の問題である。その意味で経営者はもちろん,営業担当者やSEも,自らのビジネスに与える影響を把握する必要がある。

 そのため本書では,会計の知識がなくても読めるように留意されている。ただ著者は,見積もり精度が財務数値に直結するため,SEなどの会計知識の底上げが不可欠と指摘する。簿記の仕訳などの知識がないと理解が困難な個所もあることから,会計知識のない読者は会計入門書の併読をお勧めする。

 工事進行基準の解説だけでなく,税務や管理会計,内部統制などに及ぼす影響,さらに導入時の留意点にまで言及する。内部統制と工事進行基準の関連については具体的内容に乏しいのが難点だが,工事進行基準の概要を包括的に解説しようとした点で評価できる。

ソフトウェア業における工事進行基準の実務

ソフトウェア業における工事進行基準の実務
岩谷 誠治著
中央経済社発行
2940円(税込)