最も大切なシステム俯瞰力
それでは,プロジェクトの火種が火を噴き火事になったとき,プロジェクト・マネージャはどのような対策を取るべきなのだろうか。
表1に,筆者の長年にわたる火消しの経験から導いた,出火時にプロジェクト・マネージャが取るべき基本的な対策と身に付けるべきスキルを示した。
表1●出火時にプロジェクト・マネージャが取るべき対策と身に付けるべきスキル
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まず重要なのは,「大局を見る俯瞰図の作成」である。変化が激しい現在のビジネス環境では,プロジェクトの中で起こる問題を予測して,いくつかの選択肢を設定するリスク・マネジメントが欠かせない。このためには,「木を見て森を見ず」の状態にならずに,プロジェクト全体を俯瞰するスキル,すなわち「システム俯瞰力」が欠かせない。そのための大きな武器になるのが,ステークホルダーやスケジュール,システム構成などを俯瞰的に見る俯瞰図である(図3)。俯瞰図は出火予防に非常に有効であるが,残念ながら俯瞰図を作成しているプロジェクトは少ない。そこで,火事が起こったときはまず俯瞰図を作成し,それを分析することでドミナント・アイテム,つまり重要な火種を顕在化させる必要がある。
図3●ステークホルダー俯瞰図の例
ここではコントラクタ(受注者)のPMを中心にステークホルダー全体を俯瞰している。この例では,支援策としてオーナー,コントラクタ,ベンダーが参加するPMOを設置した
次に重要なのは「サービスの消火・回復時の段階的リリース」だ(図4)。プロジェクトにおいてヒト,モノ,カネはなんとかなるかもしれないが,「時間」だけはどうすることもできない。このため,サービス開始予定日を死守しなければならない場合,まずは最低限の要件を満たす「レベル1サービス復旧(緊急復旧)」を実施し,次に残りの要件を中心にした「レベル2サービス復旧(定常復旧)」を実施する。もちろん,サービス切り分けのためには上で述べたシステム俯瞰力が必須となる。
図4●サービスの段階的リリース
サービス開始予定日に最低条件である「レベル1サービス復旧」を行ったあと,他の要件を加えて,オーナーが満足する「レベル2サービス復旧」に持っていく
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要件の切り分けにはオーナーとの十分な合意が必要である。そのため,「オーナーとコントラクタ(受注者)間のコミュニケーションの確立」も,極めて大切な対策となる。
なお,要件に関しては一般に「2-4-3の法則」が成り立つ。これは,最初は「2」だった要件が「4」にふくらみ,最終的に「3」で妥協する,というものだ。この「3」を削減することで,要件のふくらみが原因で起こる火事は速やかに消火できる。また,要件がふくらむのはそもそもオーナーのプロジェクトに対するオーナーシップ不足から来ている場合が多い。つまり,オーナーが達成しようとする目的が明確ではないのだ。しかし,コントラクタがこの事実を手をこまねいて見ているのは“共犯者”に近い。その意味でも「オーナーとコントラクタ間のコミュニケーションの確立」を実現する姿勢を忘れないでほしい。