大学の専攻は法律だったので、IT(情報技術)はやりたくなかったと語るのはユニリーバ・ジャパンの畠山勉さんだ。日本のメーカーに入社後すぐIT部門に配属されたが、1年後には辞表を提出、説得されて会社にとどまったものの、その後5、6年は、ITをやめることばかり考えていた。

 そんな畠山さんに会社が与えたのは、新しい挑戦的な仕事ばかり。その結果、若くして褒章を受け続けた。やがて自分が会社の仕組みを同期社員よりずっと知っていることに驚くことになる。役員へのプレゼンやミーティング、同期の社員ができないことが自分の日常だった。ITは会社全体を見渡せる仕事だと分かることがIT好きへの転機となった。そして、メインフレームからウェブのパッケージシステムまで、26年間走り続けた。

トップ企業は、競合からは学べない

 35歳で外資系に転職した時、日米のITに対する考え方の違いを知った。日本の会社ではカスタムメードのシステムを構築、アプリケーション構成やデータベース設計の美しさを競う。外資系ではパッケージを使うことが多く、美しさよりもアウトプットとしてのデータの正確性とネットワークおよびスピードが重要だった。この要件を達成するためには、個々のアプリケーションの作り方よりも上位レイヤーの発想が必須。アプリケーションとインフラを両輪で動かす大局観を学んだ。

 畠山さんは、ユニリーバを含め過去15年外資系企業で業界ナンバーワンの3社を渡り歩く。そして、その宿命を知る。トップを走るゆえ、競合からは学べない。新しいものを作る時は、ほかの市場を見るしかない。外からいかに吸収して中に織り込むかが勝負。部下にもどんどん外に行けと勧める。そしてこれまでネットワークを張って立てたアンテナをそれぞれのパーツに繋げていく。

 そんな畠山さんの願いは、日本のITベンダーにグローバルな市場を見てほしいということだ。畠山さんのもとには、インド・韓国・台湾のITベンダーが押しかける。それに比べて、日本のベンダーの見識は日本市場に限定される。「アジアを市場として見て開発を進めなければ、日本のIT業界の将来はない」。世界のナンバーワンで働き大局観を得た畠山さんからのアドバイスだ。

石黒 不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
 シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA