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だから部下が「うつ」になる

Part3[予防] 原因を排除し生産性向上へ

上司の心掛けで状況は大きく変わる

渡辺 一正=事業部,小原 忍=日経コンピュータ 2008/08/20 日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 2008年5月1日号pp.54-57
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 早期発見と並行して根本原因を排除しなければならない。それが対処になり、第2、第3の“患者”発生を防ぐ。

 Part1の図4で示したように、心の病の原因の1つは「人間関係」。その中で「職場の人間関係」と「上司との折り合い」を比べると、同僚が心の病になった原因では前者が10ポイントほど高い。これに対して自分が心の病になった原因では、ほぼ同じだ。外から見る以上に上司が原因になっているケースが多いと思われる。

 こう言うと「上司のほうが心の病になってしまう」との声が聞こえてきそうだ。実際、「こうした中間管理職が一番つらい立場にあり、最も心の病になりやすい」(神田東クリニックの島院長)。しかし、後述するようにEAPの本来の目的は生産性を上げること。部下のパフォーマンスを上げるという上司の役目そのものなのである。

 原因排除で上司が取り組むべきは、現在の問題点を把握し、それを解決すべく自身の改革を実行することだ。企業も、それを組織的にバックアップしたい。トヨタ自動車と日産自動車は、それを実現している好例だ。

「ありがとう」2カ月で大きく改善

 トヨタ自動車の人事異動が発令されるのは毎年1月。そこで新しく部下を持った管理職向けに研修を行っている。対象は、10~15人程度の部下を持つグループ長と、そのグループ長4~5人を束ねる室長だ。「昔と比べて管理職がすべきことは複雑になっているため実地訓練を重視している」と、トヨタインスティテュート第1人材育成グル ープの広瀬活弥主任は説明する。

 実地訓練は、2月の「職場風土アンケ ート」から始まる。部下全員に対し、「上司とのコミュニケーションが取れているか」「会社のビジョンが浸透しているか」などの40問を聞くものだ。新任管理職は、その結果を見て職場の課題を確認し、対応策を考える。課題は、部下とのコミュニケーションに関係するものが多いという。「トヨタには『指導好きな文化』がある。だが、指導としかることは違う。皆、うまい指導のやり方に悩んでいる」(広瀬主任)。

 対応策を考えやすいよう、03年からEQを使って気付きを促している。EQは「こころの知能指数」のこと。総合的コミュニケーション能力を数値化したものである(囲み記事の「EQで心を鍛える」を参照)。新任管理職はEQジャパンの「EQ診断テスト」と同時に、EQをどのように活用すればよいかの講義を受ける。講義では、どのような人が、どんな態度を取りやすいのか、どう意識を変えると見方が変わるのかなどを教える。

 図1の右側は、実際に新任管理職が部下とのコミュニケーションを良くするために考えた対応策だ。ある新任管理職は、レポートや提案書などをもらう際に必ず「ありがとう」を言うようにした。それを2カ月続けたところ、部下から積極的に話しかけてくるようになったという。講師を務めるEQジャパンの高山直社長は、「コミュニケーションを深めるのに秘策はない。地道な努力を積み重ねることが部下との心の距離を縮める」と説く。

図1●トヨタ自動車では、新任の室長やグループ長向け研修で、部下に対するコミュニケーション能力を磨くためにEQを取り入れた講習を実施している
[画像のクリックで拡大表示]

 10月には全社を挙げて職場風土アンケートが実施される。新任管理職は8カ月前の結果と比べられる。「コミュニケーション能力が上がった上司はアンケート結果も良くなっている」と、広瀬主任は研修の重要性を実感している。「部下は仕事をやらされているという感覚が減り、パフォーマンスが上がっている」(同)という。

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