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だから部下が「うつ」になる

Part1[現実] 心の病の損失額は2億円

早期発見や復職支援などの対策に企業が本腰

渡辺 一正=事業部,小原 忍=日経コンピュータ 2008/08/18 日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 2008年5月1日号pp.44-49
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 同僚が心の病にかかったときの勤務先や上司の対応は満足のいくものだった──。こう感じた人はわずか18.3%。ITの総合サイトITpro上で実施した「心の病に関する調査」の結果だ(図1)。

図1●「心の病が発生した後の、勤務先(上司)の対応は満足いくものでしたか」
図1●「心の病が発生した後の、勤務先(上司)の対応は満足いくものでしたか」

 3月28日から7日間行った同調査では開始3日で約1300人が回答するなど、心の病に対するIT関係者の関心は高い。最終回答数1421の68.9%が「勤務先で心の病にかかっている人がいる」と答え、心の病が身近になっていることがうかがえる。しかも、数年前からIT業界における心の病が取りざたされ、少なくない企業が対策に乗り出しているにもかかわらず、冒頭のようなありさまだ。企業や上司は、これまで以上に社員や部下のメンタルヘルスに気を配ることが求められている。

 企業の対応を後押しする別の要因もある。昨年、うつ病をはじめとした心の病がもとで仕事ができなくなったり自殺したりした案件で、労働基準監督署が認定しなかったものが裁判所で覆るケースが出てきたのだ。例えば昨年6月に福岡地方裁判所は、大手ITベンダー・グループのSEが自殺したのは過労が原因と認めた。自殺直前に11日間連続で勤務し、納期が迫るなか逃げ場のない出張先でバグ特定や修正など経験のない困難な作業を続けたことが、うつ病発症につながったとした。

 ただ、部下のメンタルヘルスに気を配れと言われても、何をすればいいか分からない。本特集では、早期発見・対処、予防、復職支援の観点から、今何をすべきかを探った。

36歳SE工藤氏がうつになった理由

 「頑張ってみます」。工藤一宣は自分を奮い立たせるように、藤井課長にこう伝えた。

 工藤は中堅ソフトハウスで14年間システム開発に携わってきたベテランSEだ。直属の上司である藤井課長と一緒に、大手システム・インテグレータに常駐している。これまで金融チームの下請け作業を担当していたが、流通チームへ移ることを打診された。その答えが冒頭の言葉である。自分を奮い立たせる必要があったのは、流通チームのリーダーである錦見主任の噂を耳にしていたから。入社8年目と若いが相当なやり手らしい。しかも外注先に厳しいという。

 流通チームに移ってみると、錦見主任の圧力は確かに違った。締め切りに間に合わなかったり、品質の悪いプログラムを納品したりすると、理由も聞かずにメンバーの前でチクチクと責める。メンバーは皆、萎縮していた。異動から4カ月後、新システムの企画書を作成中に工藤は、突然不安に襲われた。良い企画書の書き方はどんなものか、説明したい内容は何だったのか、考えがまとまらないのだ。

 「自信が持てなくなりました…」。工藤は藤井課長に相談した。藤井課長に産業医へかかることを勧められたが、仕事が忙しくてなかなか足を運べない。

 そうこうしているうちに企画書の提出日が来た。朝の時点でも完成しておらず、藤井課長は「今日の会議で大丈夫か?」と声をかけた。工藤は硬い表情ながら「大丈夫です。間に合わせます」と言う。藤井課長は任せることにした。しかし結果は惨敗。企画書は会議の場で破り捨てられた。「こちらが説明した内容を書いてあるだけの企画書に価値はない」という錦見主任の言葉が工藤の耳にいつまでも残った。

 その日を境に、工藤の生活が変わった。すぐに錦見主任の顔が浮かび、罪責感と恐怖感が襲う。眠れず、食欲もわかない。別チームの現場にいる藤井課長に相談する気も起きない。翌月には不眠が著しく悪化し、出社途中の駅のベンチで何時間もうずくまるようになる。出退勤に影響が出始めて、藤井課長はようやく事態に気が付いた。うつ病と診断された工藤が復職するまでに9カ月を要した。
(登場人物はすべて仮名、敬称略)

 工藤氏は実在しない。しかしモデルはいる。実際にうつ病と診断され9カ月かかって最近復職した人の話に、他の事例を混ぜたものだ。工藤氏は、どこにいてもおかしくはない。

 こうした状況は、「心の病に関する調査」からも見てとれる。上で紹介したように、「勤務先に心の病にかかっている人がいる」と答えたのは947人。回答者のなかで企業に勤めている1375人の7割弱に相当する(図2)。さらに、自身が心の病と診断されたことがある人は427人で、全回答者の3割。不安に感じたことがある人も含めると8割近くにもなる(図3)。

図2●あなたの勤務先で「心の病」にかかっている人はいますか
図2●あなたの勤務先で「心の病」にかかっている人はいますか
図3●あなたは「心の病」と診断されましたか
図3●あなたは「心の病」と診断されましたか

 厚生労働省の発表によると、2006年度における精神障害による労災請求者数は前年度から24.8%増の819人だった。うち、労災に認定されたのは205人。これは前年度に比べて61.4%増である。職種ではSEや専門技術者といった専門技術職が60人で最多だった。

 うつ病をはじめとする心の病を患うIT技術者が増え続けているのは事実だ。それはなぜなのか。上司や企業はそれを止めることができるのか。まずは、その現実を見ていこう。

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