1. 災害時でも取引の継続を目指し,バックアップ・センターを構築 2. センターの設置場所について,活断層や建物の堅牢性を独自に調査 3. 既存のテスト機をバックアップ用に流用し,短期間での構築を実現 |
「これで大きな災害でシステム障害が発生しても,24時間以内に取引を再開できる」──。大阪証券取引所(大証)の吉海浩司氏(システム本部 調査役)は,2008年3月31日に稼働を開始したバックアップ・センターについてこう語った。
大証が初めて兵庫県内に設置したこのバックアップ・センターは,大阪府内のメイン・センターから毎晩,1日分の取引データ(約10Gバイト)をバッチ処理で受信。地震や火事などの大規模災害でメイン・センターが被災しても,バックアップ・センターのシステムを24時間以内に稼働させ,前日分のデータを基に取引を再開できる。
バックアップ・センター構築が急務
大証にとって,バックアップ・センターの構築は急務だった。災害でメイン・センターそのものが稼働できなくなった場合,処理を引き継ぐシステムが存在しなかったからだ。最悪の場合,取引が停止し,証券取引所として機能しなくなる可能性もある。そこで,主力商品であるデリバティブ(金融派生商品)の売買システム,清算システム,相場システムの三つについて,緊急時でも取引を継続できる体制を作る必要があった。
しかし,バックアップ・センターの構築には二つの課題があった。(1)メイン・センターと同時に被災せず,24時間以内に取引を再開できる場所をどこにするか,(2)いかに短期間に低コストでバックアップ・センターを構築するか,である。この課題に対し,大証は以下の方法で解決に挑んだ(図1)。
まず(1)については,地震が起こりやすいとされている活断層にバックアップ・センターの候補地が位置しているかを詳しく調査し,さらに独自の19項目の評価ポイントで場所を絞り込んだ。続いて(2)は,新たにバックアップ用のサーバーを調達するのではなく,テスト用のシステムを流用して構築する,という方法を考えた。
ここからは,この二つの方法について,解決に至るまでの軌跡を詳しく解説する。