1. 情報共有基盤を,NotesからEIPソフトやJavaアプリに切り替えた
2. 膨大なNotesアプリケーションの移行が問題になった
3. 機能の絞り込みや業務部門による開発の促進などで乗り切った

 文具やオフィス用品の製造・販売などを手掛けるコクヨ・グループが全社共通の情報共有基盤として「Lotus Notes」を導入したのは,1995年のこと。以来,国内きってのNotesの先進ユーザーとして知られてきた。4100人に上るユーザー数もさることながら,営業,生産,人事といったユーザー部門の業務担当者が自ら,日報管理や顧客情報管理,商品の値引き申請・承認ワークフローなど現場業務に根差したNotesアプリケーションを開発する,EUD(End User Development)の実践企業として象徴的な存在だったからである。

 そのコクヨが2008年3月末をもって,Notesを廃止する。現在,EIP(Enterprise Information Portal)ソフトやJavaアプリケーションなどによる新しい情報共有基盤に移行すべく,急ピッチで作業を進めている。

プッシュ型に向く基盤が必要に

 コクヨが情報共有基盤を切り替えることになったきっかけは,2004年に持ち株会社制に移行し,文具製造,オフィス家具製造,営業などの社内部門を分社化するなどして,グループ全体を13社に再編したことにある(2008年3月時点の連結対象子会社は25社)。この大幅な組織変更により,持ち株会社や各子会社のトップから経営方針に関するメッセージを,社員一人ひとりにしっかりと伝える必要が生じた(図1)。

図1●コクヨの新しい経営ニーズとシステム部門が直面した課題<br>持ち株会社制への移行により,組織を超えた情報共有の重要性が増したことから,情報共有基盤を従来の「Lotus Notes」からポータル・ソフトやJavaアプリケーションを中心としたWebシステムに切り替えることにした。その際,Notesアプリケーションの移行コストの低減,ユーザー部門の教育という二つの課題が生じた
図1●コクヨの新しい経営ニーズとシステム部門が直面した課題
持ち株会社制への移行により,組織を超えた情報共有の重要性が増したことから,情報共有基盤を従来の「Lotus Notes」からポータル・ソフトやJavaアプリケーションを中心としたWebシステムに切り替えることにした。その際,Notesアプリケーションの移行コストの低減,ユーザー部門の教育という二つの課題が生じた
[画像のクリックで拡大表示]

 ところが当時コクヨが利用していたNotes 5においてプッシュ機能と呼べるのは,「新たな情報の追加をメールで自動通知する機能ぐらいで,情報を“見せる”機能としては物足りなかった」(コクヨビジネスサービス ITソリューション事業部で,情報共有基盤のWeb化推進グループ グループリーダーを務める土山宏邦氏)。Notesのバージョンアップも検討したが,「EIPやプッシュ機能に関するロードマップが当時は明確になっていなかった上に,バージョンアップすると既存のNotesアプリケーションが動かなくなる可能性もあった」(同)。

 切り替えの背景には,次の二つの事情もあった。一つは,EUDによってNotesアプリケーションが2500本にまで増えており,どこにどんな情報があるのか分からない状況に陥っていたこと。もう一つは,情報端末としての携帯電話の活用や,PCでのテレビ会議といった新しいコミュニケーション手段を積極的に導入していく方針を立てていたが,当時はNotesの対応予定が明確になっていなかったことだ。