1. ファイル・サーバーなどの情報系システムをPCとともに刷新
2. PC160台のデータを集約するためにWindowsの管理機能を活用
3. データ移行やフォルダ重複などの課題を,移行用ツールを開発して解消

 メール・システムやファイル・サーバーのデータは定期的にバックアップを取っている。だが,PC上のデータはユーザー任せ──。多くの企業で起こりがちなPC運用の課題に,児童図書の出版社である福音館書店のシステム部門も直面していた。「業務部門のユーザーから“誤って消去したPC上のデータを復旧してほしい”という問い合わせをよく受ける。しかしバックアップが取られておらず,復旧できないことがあった」と福音館書店の元村憲一氏(総務部 電算課)は話す。

 福音館書店のシステム部門の担当者は,情報系システムの再構築を機に,PC上のデータをファイル・サーバーに集約する仕組みを作った(図1)。このプロジェクトは,サーバーやPCの老朽化への対策や情報セキュリティの向上を目的として2007年に実施。Windows 2000 Serverで稼働していたグループウエア・サーバーやファイル・サーバー,Active Directoryを搭載するドメインコントローラを,Windows Server 2003を導入したサーバーで再構築した。約160台あるPCのうち,編集部門や総務部門の80台強を入れ替えた。再構築の作業は,富士ゼロックスが担当した。

図1●ファイル・サーバーにPC上のデータを集約する上での課題と解決策<br />福音館書店では,情報系システムの再構築を機に,約160台あるPC上のデータをサーバーに集約した
図1●ファイル・サーバーにPC上のデータを集約する上での課題と解決策
福音館書店では,情報系システムの再構築を機に,約160台あるPC上のデータをサーバーに集約した
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Windowsの管理機能を使う

 約160台あるPC上のデータをどうやって自動的にバックアップするのか。福音館書店のシステム部門の担当者はプロジェクト開始に先立ち,バックアップ手段を検討した。従来,PCデータのファイル・サーバーへのバックアップは,ユーザーに任されていた。システム担当者がユーザーにバックアップを定期的に実施するよう呼びかけていたが,徹底されていなかった。

 その問題を解決する手段として,システム担当者がかねてより目をつけていたWindowsの機能があった。Active Directoryと連動して利用できるWindowsのクライアント管理機能の一つ「フォルダリダイレクト」だ。PC上のフォルダの保存先を,サーバーに変更する機能である。この機能を使うと,「My Documents」「デスクトップ」といったPC上のフォルダを,サーバー上に保存できるようになる。

 フォルダリダイレクトを適用した場合,ユーザーがPCにログオンしたとき,PCがサーバーにアクセスして,サーバー上のフォルダをPCから利用できるようにする。どのPCを使っていても,ログオンしたユーザーIDが同一であれば,必ずそのユーザーのフォルダにアクセスできる。フォルダ内のファイルが変更されたり,追加/削除されたりすると,サーバー上のフォルダに変更がかかる。

 この機能を使うと,PCからサーバーへ自動的にデータをバックアップするのと同じ効果が得られる。この機能は,ユーザーの利用環境をグループ単位で設定するための「グループポリシー」で設定する。具体的には,グループポリシーの中で,フォルダリダイレクトの対象となるPC上のフォルダや,サーバー上の保存先を指定する。