UMPCやMIDの最大の要件は,様々なネット・サービスを快適に使えるようにすることである。例えばいくつかの製品は,各種ネット・サービスのWeb APIを利用した専用の内蔵アプリケーションを搭載している。
クラリオンのMiNDには,YouTubeとソーシャル・ネットワーキング・サービス「MySpace」の専用アプリケーションがプリインストールされる。これはYouTubeやMySpaceが公開するWeb APIを利用して開発したものである。
専用アプリケーションだから,Webブラウザを起動する必要はない。ユーザーは,これらのネット・サービスを素早く使える。クラリオンはさらに,「ウィジェットをユーザーが追加できるようにしたい」(同社セールス&マーケティング本部商品企画部マーケティンググループの秦 哲男 担当部長)ともしている。
パソコンばりにWindows XP vs Linux
UPMCやMIDには,常に最新のネット・サービスを利用できるアプリケーション環境が求められる。そこで必要になるのは,Windows MobileやSymbianといったモバイル向けの軽いOSやソフトではなく,パソコンと同じOS,同じWebブラウザ,同じプラグイン技術である。
理由は簡単。最新のネット・サービスの大半がパソコンを意識して作られているからだ。携帯電話やスマートフォン向けのサービスも増えてはいるが,パソコン向けに比べると,どうしても機能は見劣りする。こうしたことから,UMPC,MIDとも,OSとしてはWindowsまたはLinuxを搭載している製品が多い(表1)。ASUSやエイサーは,UMPC製品についてはWindows XPとLinuxの2モデルを用意する。
中でも主流になっているのがWindows XPとLinux(図1)。マイクロソフトが普及を狙うWindows Vistaは,モバイル向けでも評判が悪い。「AtomでVistaの動作は厳しい」(松下電器産業の作田繁昭 市場開発グループ商品企画チーム チームリーダー),「UMPCでは体感的にVistaはWindows XPの5倍は重い」(日本ヒューレット・パッカードの菊地友仁モバイル&コンシューマビジネス本部プロダクトマネージャ)といった意見が多いのである。
実際,最初のモデルではVistaを搭載したものの,後からWindows XP搭載モデルの発売が検討されるケースがある。WILLCOM D4やHP 2133 Mini-Note PCがそうだ。松下電器産業のTOUGHBOOKもVistaを搭載した製品だが,「Windows XPで使うユーザーが多いだろう」と想定し,XPへのダウングレード・サービスを提供することにした。
こうした状況に合わせてマイクロソフトは,6月に終了する予定だったWindows XPの販売期間を,同社が「ULCPC」(ultra low cost PC)と定義したUMPCやMIDなどの低価格製品に限って2010年6月まで延長することにした。