KDDIは8月1日,KDDIの固定電話サービスから移動通信サービス「au」やKDDIの固定電話サービスに発信する通話料を24時間無料とする割引サービス「auまとめトーク」を開始する。電話サービスの事業モデルを崩し,NTTグループから個人ユーザーの固定アクセス回線の奪取を狙う。

 「auまとめトーク」は,au携帯電話とKDDIの固定電話サービスをセットで利用するユーザーに対してKDDI網内の通話料を無料とする,いわゆるFMC(fixed mobile convergence)割引サービスである。

 最大の狙いは「KDDIの直収回線ユーザーを増やすこと」(KDDIの小野寺正社長兼会長)。3000万契約に達したau携帯電話のユーザーをメイン・ターゲットに,固定アクセス回線の契約数拡大を図り,NTT東西のアクセス回線市場の切り崩しに本腰を入れる。

0AB~J電話同士の無料化は業界初

 auまとめトークの適用対象となるのは,KDDIが電話番号を提供する個人向け電話サービスすべて(図1)。これらのサービスとauの携帯電話の双方を契約し,合算請求割引に加入すれば,固定電話から携帯電話への通話だけでなくKDDIの固定電話同士の通話も無料になる。携帯電話からも,自宅として登録した固定電話番号への通話は無料だ。

図1●KDDIの「auまとめトーク」の狙い<br />通話料無料化で固定アクセス回線ユーザーを増やし,通話料以外の収益機会の拡大を狙う。
図1●KDDIの「auまとめトーク」の狙い
通話料無料化で固定アクセス回線ユーザーを増やし,通話料以外の収益機会の拡大を狙う。
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 携帯と固定をセットにした割引サービスは,既にソフトバンク・グループが5月に先行して投入している。ただし,無料となるのは固定と携帯間の通話だけ。また個人の場合,割引対象は050番号のIP電話だけに限定される。

 これに対してauまとめトークでは,加入電話の代替ともなる0AB~J番号電話間の通話も無料にする。KDDIにとっては,ユーザー間の通信量がいくら増えても,それが直接収益にはつながらない。通信量に応じて料金を徴収するという従来の固定電話の事業モデルを崩した格好だ。

 KDDIはこの割引サービス導入により,2008年度に通話料で約20億円の減収を見込む。一方で,固定アクセス回線の契約数を拡大することで基本料収入を積み上げ,全体で収益をプラスにしたい考え。自社ユーザーが他社の電話に発信する際の通話料や,事業者間接続料金という収入も見込む。

 自社網内の通信量によらず,ユーザー数を背景とした基本料と相互接続料で収益を確保するという考え方は,ISP(インターネット接続事業者)の事業モデルに近い。ISPの場合は,トラフィックが増加しても受益者負担によるコスト回収はできない問題があるが,固定電話の音声トラフィックは減少傾向。無料化しても過大な設備投資負担は生じにくい。KDDIはこの点を見越して,固定電話のISPモデル化に踏み切った。