「情報システム部門のコア業務はシステムの開発や情報インフラの企画,新拠点の立ち上げ準備など。それなのに,PCの管理に関わる煩雑な業務に人手を取られていた」。食品卸の老舗,国分の沼倉正情報システム部兼営業推進部副部長は,2005年当時の同社のPC管理体制をこう振り返る。

 同社がPCの運用管理体制を大幅に変更したのは2006年4月のことだ(図1)。自前で行っていた運用管理業務の大部分を,PCベンダーの東芝に任せるという“餅は餅屋”方式に切り替えた。当時クライアントPCの多くを国分に納入していた東芝およびグループ企業のサポート拠点や物流サービスを積極的に活用して,新しい体制を構築した。

図1●国分が2006年度から導入したクライアントPCの運用管理体制
図1●国分が2006年度から導入したクライアントPCの運用管理体制
東芝グループの物流インフラやサポート拠点を全面的に活用,申請処理もシステム化した。

 それから3年目を迎える今年,体制変更の前後で環境負荷(CO2の年間排出量)がどう変わったかを試算したところ,85%もの削減効果があったことが分かった。情報システムの環境負荷が議論され始めたのは,ごく最近の話であり,2005年当時の国分もまったく意識していなかった。しかし,煩雑なクライアントPC管理業務を抜本的に見直し,合理化したことが,CO2排出量の大幅な削減につながった。

流通業共通の悩み,煩雑な多拠点のサポート

 流通業界でも比較的早い時期から1人1台体制を確立していたという国分では,過去に何度もPCの調達や運用管理について見直しをしてきた。2002年に行ったのは,PC調達の一元化。同時に「利用部門が利用料を払って,情報システム部門からPCをレンタルする」(沼倉副部長)方式にした。これに伴い,PCの運用管理業務を情報システム部門が一手に引き受けることになった。

 当時は情報システム部員2~3人が,PCの新規配布,設定変更,移動,修理といった申請の受け付け,PCやソフトの購入,インストールや設定,利用部門への発送,といった業務を担当していた。だが,一時期に数十件もの申請が集中するなど作業量の変動が大きく,対応に苦慮することが多かった。

 申請の受付業務にも問題があった。「紙の帳票をFAXでやりとりしていたため,作業が煩雑になり月次でまとめて処理するようにしていた」(同)。その結果,申請のタイミングによっては2カ月近く待たせる事態も発生した。そこで国分は,2005年にPCの運用管理体制の見直しに着手した。

 実は国分には,PCの運用管理業務が煩雑になりやすい要因がある。流通業である同社は,企業規模に比べ拠点数が多いという点だ。2005年当時,国分は北海道から沖縄まで大小150もの拠点を抱えていた。人事異動や拠点の変更があるたびに,クライアントPCの新規配布や拠点間での移動,設定変更といった申請が多数発生する。

 相談を持ちかけられた東芝はその頃,やはり多数の拠点を持つ生命保険会社向けに,PCの運用管理サービスを開始したところだった。PCの配送や保管,キッティング,設定,インストールといった作業一切を,東芝グループのサポート拠点や物流網を生かして引き受けるというものである。煩雑だった申請業務も,Webベースのワークフロー・システムに切り替えることにした。