会社に勢いがないと嘆く経営者たち。その多くは、昔からの儲けの仕組みを変えようとしていない。今こそITの威力を理解し、新しい経営基盤を築かなければならない。「まず経営戦略ありき」を忘れずに、改革の青写真を描くことが大切だ。

 「なぜ、売り上げが伸びないのだろう」「なぜ、新しい顧客が獲得できないのだろう」「なぜ、コストが削減できないのだろう」――。

 中堅・中小企業の経営者からは、今なお、似たような悩みが寄せられている。私がITコーディネータとして、数多くの中堅・中小企業と付き合ってきた経験からいえば、これらの問いに対する答えは1つに集約される。それは、「何年も前の儲けの仕組みのまま、“なぜ”を繰り返しているから」だ。

 インターネットや携帯電話が普及したり、規制緩和が進んだりと、世の中は猛烈なスピードで変わっている。経営環境の変化が激しいなか、企業は常に経営変革・業務変革を繰り返して競争力の維持向上を図らなければ勝ち目はない(図1)。経営者は、まずここに気付かなければならないのだ。もちろん、現場のIT 担当者にとっても、この気付きは重要だ。常に改革の視点がなければ、本当の目的を見失いかねない。

図1●企業の競争力を高めるには、ITを活用してPDCAサイクルを加速することが不可欠
図1●企業の競争力を高めるには、ITを活用してPDCAサイクルを加速することが不可欠
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PDCAの加速で競争力を

 これはなにも中堅・中小企業に限った話ではなく、大企業にも共通する課題だ。戦略を明確にした上でPlan、Do、Check、Actionという、いわゆるPDCAサイクルを加速させ、成長の原動力としなければならない。こうした取り組みでは、規模の小さな企業のほうが有利な面もある。経営トップの方針が全員に伝わりやすいし、身動きもしやすい。それだけ中堅・中小企業は改革を進めやすいと言えるのだ。

 具体的に改革を推進していく上で、欠かせないのが「IT経営」という考え方である。今の時代、もはやITの活用なしで、他に抜きんでた競争力を身に付けることは難しい。

 このIT経営という言葉、まだ聞き慣れないかもしれない。経済産業省が進めるIT経営応援隊の活動では、IT経営を、「積極的にITを活用している経営」「経営に生かす戦略的なIT化」と定義している。ちなみにIT経営応援隊とは、経済産業省の主導の下、全国の商工会議所や自治体、金融機関などと連携し、中堅・中小企業の経営者向けに「IT経営研修」や「IT経営成熟度診断」などを展開している活動である。

 IT経営を実践している企業を、私なりの解釈で説明すると、「ITを活用して、経営のPDCAが回り、ビジネス競争力が毎年スパイラル状に高まっている企業」である。

 強い企業、秀でた企業を目指し、IT経営を実践していくには、どのようなステップが必要となるか整理してみよう。先にも触れたが、まず何よりも大事なのが「経営者の気付き」である。具体的には、次の4つの点について気付き、理解しなくてはならない。

●競争力を生むITの威力
●最優先で取り組むべき経営課題
●IT人材育成の必要性
●身の丈に合ったIT投資の大切さ

 自分で考えたり、専門家の意見に耳を傾けたりしながら、経営トップが心から納得することが大切なのである。