CIO(最高情報責任者)は大企業にのみ必要な職務ではない。即断即決で行動を起こせる中小企業に、経営とIT、両面の見識を兼ね備えた人材がいれば強い競争力が生まれる。今こそCIOの意義を理解し、育成に向けて動きだそう。

 本連載の第3回において、靴下専門の企画・卸であるタビオ(旧社名ダン)のIT経営への取り組みを紹介した。成功の背景には、CIO(最高情報責任者)として改革の陣頭指揮を執った、現常務の丸川博雄氏の存在があった。今回は、中堅・中小企業では馴染みが薄いと思われるCIOの役割と重要性について考えてみよう。

 CIOとは、Chief Information Officerの略。一般には「最高情報責任者」と訳され、「IT担当役員」と言われる場合もある。一部には、CIO=IT部門長という認識もあるようだが、明らかに違う機能を果たす役職である。

位置付けは大きく3パターン

 CIOの位置付けを見ると、おおむね3つのパターンが存在する(図1)。1つは経営トップとIT部門との間に位置するタイプだ。タビオの丸川氏もこの形に属する。中堅以上で、CIOが存在する多くの企業がこのパターンだろう。人物像としてはIT部門以外に、経営企画、総務、営業など豊富な業務を経験していることが多く、経営戦略や事業戦略に対するIT活用の提案、あるいはITへの橋渡し役を担っている。

図1●IT戦略を担う役員の位置付け
図1●IT戦略を担う役員の位置付け
[画像のクリックで拡大表示]

 CIOがIT部門長を兼ねているパターンもある。この場合、IT部門を長年経験してきた人物が多く、社内のIT化の推進役として期待されている。ただし、技術面での知識と関心が高いあまり、経営とIT投資の乖離を生んでしまうという危険もはらんでいる。他の業務部門への発言力が薄く、部門のセクショナリズムに振り回されるケースもあるようだ。

 中堅以下の企業では、経営トップがIT部門を直轄し、自らCIOとして活躍する例もある。目指すビジネスをIT活用で実現しようとする若手経営者、後継者などが相当する。もっとも、規模の小さな企業では、CIOがいない例が多いのが実情だ。日本情報システム・ユーザー協会が実施した2006年度の調査によると、「役職として定義されたCIOがいる」との回答は、100~499人規模の企業で5%、同500~999人規模で7%など、まだ1桁台にとどまっている。