前回に続き、本連載のまとめとして、筆者が考えるプロジェクトマネジメント(PM)の勘所を提示したい。常に基本を大事にし、冷徹に考え、情熱を持ってプロジェクトに向き合うことが肝心である。そして、プロジェクトの成功は何よりも顧客との運命共同体の形成にあることを強調したい。1年間365句に込めた筆者の経験則が、読者が関与されるプロジェクトの好展開に少しでも役立つことができれば幸いである。

358日目●冷徹と情熱で挑めプロジェクト

 新規業務システムや、大規模システムに対応する場合は、プロジェクト開始前から多角的に問題点を洗い、それに対する備えをしなければならない。「これは何とかなる」などとは一切考えず冷徹に状況を見極め、最悪の事態を想定した対策が必要である。

 しかし、経営革新や社会インフラの整備などに大きく貢献したシステムは、いずれも多くの困難に挑戦し、それらを乗り越えて実現されてきたのだから、新しいシステムに挑戦する情熱を失っては、社会の進歩も技術の進歩も止まってしまう。

 冷徹に危機に備えながら、情熱を持って難システムプロジェクトに挑戦したいものだ。


359日目●プロならばあえて明言無理は無理

 組織においては通常、「前向きにやれ」「挑戦せよ」「明るくやれ」ということが大事にされるので、多くの人はマイナス発言をすると評価が下がると感じ、「できない」「無理だ」「止めよう」などとはなかなか言わない。しかし、プロジェクト・マネジャーには、問題点やリスクを冷静に見つめ、正念場になったら悔しくても「無理は無理」と明言するプロ意識が必要である。

 顧客や上司に安易に迎合したり、とりあえずはそのままに「後で何とかする」などと問題を先送りしたりするようでは、プロジェクトはまとまらない。また実態と無関係に、「頑張ります」とばかり言っていると、顧客からもだんだん信頼されなくなってしまう。プロとして言うべきことはきちんと言うことを顧客も期待しているのだ。


360日目●F、C、D、Tバランスとるのがソリューション

 ソリューションは、F(機能)、C(コスト)、D(納期)、T(技術)のバランス解である。いくらいい機能でも、技術的に未熟であればプロジェクトは大混乱し、最悪途中で断念せざるを得ないような悲惨な結果になるかもしれない。また、顧客の要求を何でも取り込んでいると、大赤字になるばかりでなく、納期も大幅に遅れ顧客にも大変な迷惑をかけることになる。納期に間に合わないと役に立たないシステムがあることも忘れてはならない。

 遅ればせながら何とか出来上がったとしても、重すぎて使いにくくなることがある。納期と予算の範囲内で、少しでもよりよい解を求めベストを尽くすことがSEの責務であろう。


361日目●少しでもベターを求め知恵を出せ

 情報システムは顧客の考え方に強く依存するだけに、ベンダー側SEは「提案しても拒否されるだろう」とあきらめたり、「問題が起きたときに考えよう」と問題を先送りしたりしがちである。しかし、SEは、やったことが無駄になろうと回り道になろうと、“ダメもと”精神であるべき姿を求めて考え、顧客を説得し、顧客に請願する努力を続けることが大事だ。

 例えば、早期仕様凍結を迫る、段階的稼働開始を提案する、大胆な設計の代案を提示する、値増しや開発量削減案を申し入れる、テスト支援を請願する、などである。たとえ請願の成果が期待値にはるかに及ばなくても、小さな成果を積み上げていくことが肝心だ。手をこまぬいていては、何の成果も期待できない。

 Better than Worstの精神で、Never give up!である。