前回に続き、SEとしての成長を目指して、個々人がなすべきことについて言及する。SEにとって大事なことは、業務知識と技術の深耕はもとより、視野の拡大を目標に、よく考え、よく学び、よく質問し、そして積極的に提案し、発表する、といった努力を継続することである。こうした地道な努力を通じてこそ、SE力の強化が図れるのだ。

344日目●ベテランも資格目指せば知識増え

 種々の資格取得はベテランも目指そう。現在、IT関係や、プロジェクト管理の世界には、国家資格をはじめ多数の資格が存在している。だが、優れたベテラン設計者や、経験豊かなプロジェクトマネジャーは特に、資格取得にそれほどの価値を感じていない人が多いようである。

 もちろん、資格取得者が無資格者より高度な設計ができるとは限らないし、プロジェクト管理に失敗しないとも限らない。だが、折角の資格制度なのだから、ベテランのSEや設計者も、自分の技術レベルや管理能力にふさわしい資格取得に挑戦してほしい。

 べテランやチーム・リーダーがあえて資格試験に挑戦すれば、たとえ少しでも、現在の仕事の枠を超えて、「新しいことを勉強しよう」という気になり、自分自身の知識と視野の拡大につながる。また過去の知識の再整理もできて部下の指導にも役立つはずだ。取得に成功すればチームのモラールも当然上がる。


345日目●要所では夢に見るほど考えよ

 要所は徹底的に考えよう。システム開発には、納期、コスト、技術、人員などさまざまな制約がある。そのため必ずしも理想的な思いどおりの設計はできず、妥協を余儀なくされる場面も多い。しかし、せっかく設計に参加する以上は、たとえ一部であっても、後輩に語り誇れるような美しい設計を目指したいものである。

 いい設計をするためには、システムの中核となる大事な部分を選び、その基本設計時点に、必死に考えなければならない。無限に時間を割くわけにはいかないから、1週間なら1週間と自分で期限を決め、その間は他のことはすべて忘れ、それこそ寝ていても夢に見るぐらいに考え続けたい。

 新しい理論や新しい技術が登場した場面において、多くの天才が必死に考えた末に、飛躍的な考えに到達したという例がいろいろ語られている。天才でなくても、よく考えれば、それなりのアイデアが浮かんでくるし、そのアイデアが目前の問題解決に何らかの役に立てば、設計にも自信がついてくるものだ。


346日目●休まない下手の考えリスク避け

 リスクを常に考えよう。「下手の考え休むににたり」とは、よく言われる。確かに、考えているようでなかなかいい案や結論が出せない人はいるから、「まずは実践だ」と言いたくなるのも理解できるが、「事前に考えるのは面倒。まず着手してから考えよう」とするSEが多すぎる気がする。

 情報システムの構築といったリスクの多いプロジェクトで失敗を避けるには、リーダーを先頭に、プロジェクト・メンバー全員が常にリスクを考える努力が重要だ。未経験者がいくら考えても失敗は避けられないかもしれないが、最初に何も考えていなければ、失敗を反省しても、なかなか次につながる反省にはならないだろう。

 やはり、何かリスクはないかと、だれもが常に考え続けることが大事である。


347日目●簡単な数が理解を深めさせ

 もっと数字に関心を持とう。プロジェクト管理において、数字だけに頼りすぎるのも困るが、あらゆる物事の理解のためには数字は大事である。契約時のあいまい性のために、システム規模が見積もり時点より相当膨張するという事実も、例えば「2-4-2-3」(2007年6月11日号、10日目参照)という経験則に基づく数字を使えば、互いが同じ理解の下に語り合える。実際にどれだけ増えるかは状況によって異なるが、何の数字もないよりは、はるかに分かりやすいはずだ。

 ところが、SEや設計者に聞いてみると、意外に世の中の数字に関心を持っていないことに驚かされる。公表さている生産性や事故発生率、各工程の工数比率といったデータには、それぞれに背景や異論があり固執するのは変だが、無関心すぎるのはもっとおかしいと考えるべきだろう。世の中の常識を知らずに改善活動はできない。