今回は顧客との運命共同体をいかに築くかである。法的に契約を満たせばよいというものではなく、顧客とベンダーが運命共同体として同じ船に乗り、荒波を乗り切って行くことが、プロジェクト成功の必須条件になる。幹部層も含めて顧客とよく連携を取り、プロジェクトの成功に必要なことは積極的に提案するとともに、遠慮せずに意見交換できる関係を構築したい。

309日目●まず汗をかいて絆を強くせよ

 システム構築プロジェクトを成功に導くためには、顧客とベンダーが運命共同体を形成できなければならない。そのためには、顧客とベンダーの間に、組織としての信頼関係を築く必要があるが、それ以上に両社の担当者同士の連帯こそが重要である。

 顧客に信頼されるSEや設計者には、何といっても高度な技術力や幅広い業務知識の獲得を目指す努力が求められる。さらに、顧客の担当者とさまざまな場面で情報交換したり、折衝したりしなければならないだけに、“顧客と親しくなる”努力も欠かせない。

 対人関係が苦手なSEや設計者が少なくないなかで、誰にでもできる一番着実な対応方法は、顧客の担当者と一緒に汗をかくことである。顧客が苦労していたら、自分の時間を犠牲にしてでも一緒に悩み、考え、手伝う機会を増やす。時には、残業に付き合うくらいのことをすれば、顧客との会話も増え、顧客からの信頼感も高まり、相互の絆も強化されるだろう。同時に、顧客業務に対する理解も深まっていく。


310日目●仮説たて業務を問えばよくわかる

 顧客の信頼を得られるシステムを提案するためには、顧客業務の本質についての理解力を深める必要がある。当然、業務に関連する参考書を積極的に読む必要があるが、何よりも、顧客に質問することが重要だ。単に業務内容にとどまらず、業務の目的や必要性を尋ねることが大事である。

 業務の本質を早期に、かつ的確に把握するためには、単にu何ですか? なぜですか?vと顧客に聞くのではなく、業務の目的に関する自分なりの仮説を立てたうえで、uこういう目的でこの業務は必要なのですか?vと質問することが、本質の早期理解につながっていく。仮説が間違っていれば顧客は必ず訂正するだろうし、逆に合っていればそのSEへの信頼感も増すはずだ。

 「仮説設定型質問」により業務の本質が分れば、「顧客に役立つ、より経済的なシステム」の案が浮かびやすくなるほか、会話を通じて互いの信頼関係と連携の強化にもつながるだろう。


311日目●ユーザーの業務知識の力借れ

 プロジェクトを成功させるためには、顧客にもプロジェクトの実作業に参加してもらえるよう是非頼みたい。例えば、出力帳票や出力画面の確認は、顧客の手助けが最も効果的である。業務に詳しい顧客は、業務テスト結果の合否判定スピードが、ベンダーのSEやプログラマよりはるかに速い。総合判断力や直観的判断力は、業務経験の長さによって大きく差がつくからだ。

 さらに、旧システムを新システムに移植し一部を改造するような場合、ベンダーの仕事はコンバージョンが主体となる。ひたすらルール通りに変換していくため、移植結果に対して、ルール通りかどうかは判定できても、業務上問題がないかの判断には絶望的な困難が伴う。こうした確認判断作業は、顧客にしてもらったほうがよいというよりも、絶対に顧客に主導してもらうべき性格の仕事であろう。


312日目●難プロは共に開発するがよし

 困難が予想されるプロジェクトでは、顧客とベンダーが同じ船に乗れるように、顧客に極力開発を分担してもらうべきである。用意できる開発要員数にもよるが、特に顧客チームには、深い業務知識を必要とする部分や、 結果の良否判定に業務ノウハウを要する部分を委ねたい。

 一方ベンダー側が担当すべきは、インフラに近い制御部分や、プログラミング難度が高いが仕様は変わりにくい部分、さらには工程上早期完成が求められる部分などである。互いの強み・弱みをしっかり認識し、強みを生かし弱みを補うように仕事を分担すれば、やりがいもあるし、失敗も減り、プロジェクトの成功に大いに役立つだろう。