東京医科大学病院は、基幹系システムのデータベースをユーザーに開放し、Excelを使った現場主導のシステム企画・導入を推進している(図1)。狙いは開発のコスト削減と、業務改善のスピードアップだ。

図1●東京医科大学病院はパッケージ・ソフトの機能不足を現場主導型開発で補完している
図1●東京医科大学病院はパッケージ・ソフトの機能不足を現場主導型開発で補完している
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 同病院は2000年から段階的に、新宿・八王子・霞(茨城県)の基幹系システムをNECの病院向けパッケージ・ソフトに刷新している。ここで問題になったのが、パッケージに備わっていない機能の追加だ。「1つの機能を追加するだけで、最低でも100万円はかかる。期間も1カ月は必要だ。診療科ごとの個別ニーズを聞けるほど、IT投資の余力や時間はない。その分を本業に振り向ける必要がある」(医療情報室の成清哲也課長)。

 そこで同病院では、総務や経理、診療科ごとにデータ分析用のデータベースを用意。併せて、アイエルアイ総合研究所のExcel用マクロ作成・管理ツール「StiLL」の操作教育を実施し、現場主導のシステム企画・導入を支援することにした。例えば、今年4月に導入した入院患者識別用のバーコード付き腕輪作成システムは、ラベル・プリンタ込みで15万円、開発期間は2週間で導入できた。経理部門は診療科別の損益管理や原価計算システムを開発し、診療業務のムラ・ムダ・ムリをチェックできるようにした。「情報活用の促進といった意味でも、現場主導のシステム企画・導入を認めたほうがよい」と成清課長は指摘する。

 ただし、患者情報など病院で扱う情報はセンシティブな個人情報が含まれているため、部署や担当者ごとにデータベースのアクセス権を限定したり、ログを保存することでセキュリティを保っている。データの一貫性を保つため、データの更新は認めず、データ利用は参照だけに制限している。