今日のP4P(検索連動型広告)市場動向を鑑みると,ナショナルクライアントや大手企業のP4P導入が普遍的なものになり,今後は中小企業の導入が加速して市場を牽引するフェーズに突入したといえる。こうした諸々の流れにともなってか,ここ最近になってP4Pを取り扱う代理店や導入を検討する中小企業が急増しているように感じる。

 筆者は仕事上,広告代理店やウェブ制作会社,あるいは企業のウェブ担当者とお話しをさせていただく機会が多い。そこで,やはりというべきか,P4Pの運用の部分においては皆さん試行錯誤されておられるようだ。

 P4Pの運用が難しい,手間がかかると言われる原因を一概に述べることはできない。しかし,運用をする際に注意すべき点は誰にとっても共通である。それは,運用スケジュールや作業内容の明確にしておくということに尽きる。

 P4Pという広告はキーワードとそれに紐付く広告文の出稿数に制限がない。追加しようと思えば際限なく追加できる。ロングテールという概念の浸透もあってか,闇雲にキーワードを増やし,それに連動して広告文を量産している広告主も少なくない。

 また,キーワードの入札単価やリンク先のURLにおいても無制限に変更できる。そのため,効果検証なしの変更作業に没頭し,終わりなき改善対策にリソースの大半を費やしてしまうことも珍しくない。気づいた時には他の仕事が全く片付いていない,そんな経験に読者の皆さんは身に覚えないだろうか? 極論をいえば,P4Pは運用改善のための作業に終わりがない広告と言えるだろう。

 だからこそ,P4P運用を開始する際,最初にすべきことは担当する部署や人のリソースを考えたうえでスケジュール・作業内容を明確にすることだ。基本はPDCAサイクルに則った落とし込みがベストである。

 大まかではあるが,軸をB2C(企業と一般消費者の取引),B2B(企業間の取り引き)に分けて期間を3カ月で区切った場合,下記のスケジュールと作業内容が1つの目安になる。

【B2C】
0カ月目・・・Plan
1カ月目・・・Do/Check/Action
2カ月目・・・Do/Check/Action
3カ月目・・・Do/Check/Action
【B2B】
0カ月目・・・Plan
1カ月目・・・Do
2カ月目・・・Do
3カ月目・・・Do/Check/Action

 サービスに対する利用者(検索ユーザー)が多い場合は,必要なデータ量がすぐに溜まるためPDCAサイクルの頻度を多くとるようにする。逆に,サービス利用者や運用予算が少ない場合は必要なデータが溜まりにくいので,ある程度まとまった時点でCheckとActionを行う。そうしないと実態とかけ離れた運用になってしまう可能性があるため注意が必要だ。

 例えば,実際の作業内容では一般的に下記が挙げられる。

PLAN ・・・運用予算,運用目標,出稿内容の確定
Do  ・・・広告出稿
Check・・・レポーティング
Action・・・出稿内容の変更・追加,予算・入札額・出稿時間の変更

 上記を基本とし,目標に対する現状との乖離を把握して各作業内容をより細かく掘り下げる。そうすることで理想に近づく運用が可能になる。もちろん,作業内容を掘り下げたぶんに比例して消費するリソースを計算し,別途確保することもお忘れなく。

 P4Pの運用で疲弊せずに成功する秘訣。それは,スケジュールと作業内容(作業量)を明確にしたPDCAサイクルによる仕組みを構築することだ。自社独自のPDCAサイクルを持つことで,状況に合った無理のない最適な運用が可能になるといえる。

(執筆:SEMグループ AMチームマネージャー 渡辺 明)




 本コラムは、アウンコンサルティングのサイト 「(((SEM-ch))) 検索エンジンマーケティング情報チャンネル」に連載中の「SEM特撰コラム」を再録したものです。同サイトでは、SEOや検索連動型広告など検索エンジンマーケティング(SEM)に関する詳しい情報を掲載しています。