外注先をパートナーとして信頼し、育成するにしても、いろいろ困ることはある。複数の外注先を対等に扱うと、各社が「自社の責任範囲」にこだわり始めるかもしれない。元請け側の技術力が錆びて“空洞化”が進む危険性もある。外注先が海外であれば、言葉の問題以外にも、日本の業務知識や品質文化を根気強く教えていかねばならない。

302日目●任すには早めに客の前に出せ

 子会社の育成においては、親会社への技術者派遣から始まり、次第に部分的に請け負わせ、そのうちに特定プロジェクト全体を一括で任せることになる。しかし、ここまでは親と子の垂直分業であり、あくまでも顧客との対応は親会社がやっている。

 子会社の力が十分についてくれば、契約を含め子会社が直接顧客対応する水平分業への進展が望まれる。だが、垂直分業から水平分業への飛躍はそう簡単ではない。何よりも子会社が顧客から信頼されない限り、顧客から直接契約を認めてもらえないからだ。

 この壁を突破するには、特に早い段階から顧客の責任者と子会社の責任者が直接話し合える場を持てるよう、働きかけや雰囲気作りに親会社は努力すべきである。それによって、子会社の責任意識も強くなるし、担当者の実力も、そして何よりも意欲が大幅に強化される。結果、顧客から見た不満度が減少し、やがて独立会社としての存在を認めてもらえるようになるだろう。


303日目●対等はかえって本音隠しがち

 大規模システムの開発に当たり、自分がプライムとなり複数のベンダーに参加してもらう場合は、参加する各ベンダーとは密接な連携関係を構築することが極めて重要である。この際、参加各社に仕事を等分に分けるのではなく、各社の仕事量に差をつけ、「中心となるベンダーが他のベンダーをまとめるは当然」と考えさせたほうが、全体をまとめやすくなる。

 もし対等に扱うと、各社が自分の責任範囲にこだわり、「それ以上のことは知らない」ということになりがちだ。問題が起きても、他社のことを意識しすぎ、つい事実を隠したり、自分の本音を言わなくなったりしてしまう。


304日目●外注の管理見習えよい客に

 ベンダーのプロジェクト・リーダーにとって、プロジェクトを統括・牽引し、ベンダーに対しても厳しいが的確な指導や管理をする優れた顧客に出会えることほど幸せなことはない。顧客に恵まれる幸せを忘れず、自らが発注する外注先に対しても、優れた顧客の管理方法に見習いたいものだ。

 外注先のメンバーにとっての直接の顧客は、最終ユーザーよりも発注元なのだから、発注元が立派でないとやはり困る。発注元として、顧客にこうあってほしいと期待することを外注先に提供し、顧客にしてほしくないことは外注先にもやってはいけない。顧客の優れた管理手法は積極的に見習い、悪いと感じる管理手法は反面教師として避ける努力をすることが、優れた外注管理につながるだろう。


305日目●空洞化穴埋め策も考えよ

 一括外注が一般化してくると、元請ベンダーの要員は業務内容がよく分からなくなったり、ひどい場合はIT技術力すら錆びてきて、俗にいう“空洞化”が進んでしまう危険性がある。しかしSIベンダーといわれる以上は、技術や業務知識の空洞化を何とか避けるための対策がどうしても必要だ。

 そのためには、会社全体としては外注先任せが増えても、適切なプロジェクトを選んでは、社員自らが手を動かし自分たちで最初から最後までをまとめる機会を常に設定しておきたい。そして、すべての案件を一様に管理するのではなく、自ら開発する案件と、全面的に外注先に任せる案件を明確に意識することが大事である。

 特に、連結対象子会社に発注するときは、その会社を育てグループ力を上げるためにも、丸投げ発注のよい面をうまく活用する必要がある。子会社の育成と、親会社の空洞化防止を共存させることをよく考えたい。