システム開発の世界では、国内外を問わず、外注会社の開発力を活用しないわけにはいかない。それだけに、「外注管理」もまたプロジェクト成功を左右する。単に安さだけを期待したり、あいまいな仕様のまま仕事を放り投げたりするだけでは失敗する。外注先を「パートナー」と考え、信頼し、育成できるか。外注管理は人間臭いものだ。

295日目●身の丈に合わぬ発注むだなこと

 日本では、ある規模以上のITベンダーのほとんどがサブコントラクタや外注会社を活用している。外注先は国内にとどまらず、韓国、中国、インド、ベトナムなど海外に広がっている。ベンダーの社員だけでは、顧客の要求に応えるだけの要員や技術力をまかなえないことと、コスト面でも顧客の予算内に収まらないことが、外注を活用せざるを得ない大きな理由である。

 しかし、原価ばかりを考え、外注会社に実力以上のことをさせたり、仕様が決まっていないのに一括発注するような無理をして、結局はうまくいかず、途中で引き取らざるを得ない例が散見させる。外注先の実力を冷静に判断しないと、結果的にプロジェクトは混乱し、原価面でも高くついてしまう。

 特に、単価が安いからといって、仕様があいまいなまま海外に発注してしまうと失敗の確率が大きくなってしまうので注意が必要だ。


296日目●動くまでやめずに粘る人頼む

 発注しようとする外注先の経営状況はしっかり見ておかないと、途中で挫折する危険性があるため注意が必要だ。収益性、安定性、財務状況など一般的な経営状況の評価はもとより、従業員の定着性にも注目したい。中途退職率が高い会社は、いくら優秀なSEや設計者がいても長期プロジェクトを担当させるのは危ない。

 また外注先から優秀な人材を安定的に確保するためには、いったん発注したら、できるだけ安定的に発注を続けられるように双方が努力する必要がある。ソフトやシステムのように極めて人間臭い仕事では、会社対会社というクールな関係を超え、技術者同士の運命共同体を形成できることが大事だからだ。これはベンダーと顧客の間のあるべき関係と全く同じである。


297日目●転送をされても困るあいまい仕様

 外注に際して、すべてを相手任せにする、 “放り投げ”発注が時に見られる。外注先との付き合いが長く、相手の力量も分かっているならば、放り投げも一概に悪いとは言えないが、最終責任が発注側にある以上、発注仕様書だけは明確に記述しなければならない。自分たちも顧客からの仕様があいまいだと苦戦するのだから、外注先にもあいまいな仕様をそのまま転送して、同じむだな苦労はさせないようにしたい。

 もし、仕様を固め、仕様書を書く段階から任さざるを得ないなら、最低限、出来上がった仕様のレビューだけは手を抜いてはならない。仕様があいまいさを残したままだと、失敗や混乱が生じた際に応援を送っても、手の打ちようがなくなってしまうからだ。仕事の丸投げは仕方ないとしても、あいまい仕様を丸投げすべきではない。


298日目●パートナーもいつか逃げ出す馬鹿管理

 外注管理が大事だとはいえ、その中身はしっかりした意味のある管理でなければならない。内容もよく分かっていないのに細かく管理して余計な報告を強要したり、外注先からの技術支援要求にはなんら応えないにもかかわらず、顧客から仕様の追加要求があるとそのまま外注先に放り投げ、予算も一切追加しない、といった馬鹿管理をやっていると、外注先もついには逃げ出してしまうであろう。

 発注条件が厳しくても、そこには論理的な正当性がなければならないし、長い目で見て外注先の成長に役立たなければならない。顧客も外注先も、ともに大事なのだ。外注先を、長く付き合っていける“パートナー”に育てていくことが、外注管理の要といえる。