「悪い話」をタイムリーに報告できるか、怒鳴らずに聞けるか。定期的な報告を簡潔に伝えられるか、聞いた方はきちんと反応しているか――。報告者と聞く側の意識がそれぞれに高くなければ、プロジェクトにおける意思疎通は図れない。適切な報告の授受のためには、報告する側と受ける側、双方の努力が求められる。

288日目●難プロは幹部の理解不可欠だ

 難航が予想されるプロジェクトに関して、ベンダーの幹部が全然知らないということは考えにくいが、プロジェクトが重大な問題を抱えていることについては、事態がかなり深刻化するまで気付かないというケースは少なくない。多くのプロジェクトが同時に走っているベンダーの幹部にとって、個々のプロジェクトの実態把握は容易でない。プロジェクト・リーダーが的確な報告をしない限り、実態は幹部に理解されない。やはり、早くから定期的な幹部報告会を設定し、プロジェクトの実態を幹部にしっかり理解してもらうことが必要である。

 また予算を大幅に超える赤字が出そうなときは、判明次第速やかに一報を入れておくことが肝心である。プロジェクト・リーダーが幹部に偶然出会ったときでも、幹部から「あのプロジェクトは順調か?」と声をかけられるくらいになっていることが望ましい。


289日目●報告を求めるくせにすぐ怒鳴る

 管理者やリーダーにとって報告は絶対必要なため、「悪い報告こそ早く報告せよ」と部下に言うくせに、報告を受ける姿勢ができていないリーダーが多いことは、おかしな現象だ。悪い報告を嫌がったり、「何でそんなことになった。何してるんだ」と怒鳴りつけたりするリーダーや管理者が多いのは困ったものである。悪い報告はできる限りしたくないという報告者の気持ちをもっと理解しないと、ついつい大事な報告が避けられてしまうという事実を深刻に受け止めなくてはならない。

 先日もある先輩が、「悪い報告を上げて、『早めに教えてくれてありがとう』と言われたのは、会社生活のなかでKさんだけ」と言っておられたが、これが平均的実態であろう。多くの上位者が「報、連、相」「報、連、相」と言う割にはうまくいかないのは、すべて上位者自身に問題ありと反省すべきである。


290日目●週報に返事なければ出す気せず

 大プロジェクトにおいては、サブプロジェクトのリーダーに毎週、週報の形で状況報告させる例は多い。作業場所が分散しているような場合に週報が必要なことはよく理解できる。しかし、現状を見ると、多くのプロジェクト・リーダーはサブリーダーからの週報を、まじめに読んではいるが、週報に対してきちんと反応しているかとなると疑問である。週報を出させる以上、プロジェクト・リーダーはたとえ一言でも返事を書く努力をすべきだ。

 報告者にとって、報告に厳しい叱責をもらうのも嫌だが、報告を無視されるのはもっと嫌なもので、きちんと報告する意欲をそがれてしまいがちである。一番いいのは報告者に役立つ指示やアドバイスであるが、単なる激励だけでも報告者にはありがたい。毎週すべての報告に返事を書くのは無理であっても、時には返事を書く努力はすべきであろう。


291日目●10分を超える説明聞き飽きる

 上長への報告は極力簡明にして上長をイライラさせないことが大事である。大体10分以上黙って聞いてくれる上長はいないと考えたほうがよい。不足部分は上長からのコメントを聞いた後、追加説明するほうがいいであろう。質問があれば、それに丁寧に答えることによってさらに理解を深めてもらえる。また短い時間で説明をするためには、結論を述べてからその理由を述べたほうが当然のことながら理解されやすい。

 忙しい顧客や社内の幹部は時間がないので、たまたま乗り合わせたエレベータのなかでもポイントを説明できることが、営業やSEには求められる。エレベータに乗っている間にポイントを話し切れるかどうか、これを「エレベータテスト」と言う。短く説明するためには、説明の論理化、構造化、階層化が求められるので、自分の思考力を鍛えるチャンスと考えればやりがいのあることである。