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発注者ビューガイドラインは「外部設計」のノウハウ集である。外部設計とは要件定義の結果を基に、インタフェースを確定させることを指す。この工程でユーザーとシステムのインタフェースである画面や帳票に加えて、外部システムとの接続部分を決めていく。基本設計や概要設計とも呼ぶ。
外部設計は失敗プロジェクトを防ぐ上で非常に重要になる。ここがユーザー(発注側)とベンダー(受注側)の間で仕様を合意できる最終段階となるからだ。ベンダーがユーザーに分かりにくい形で外部設計書を記述し、それをユーザーがきちんと確認せずに開発を進めた結果、プロジェクトに問題が発生する――。こんな例が少なくない。
ビジネスの要求を素早くシステムに反映することが求められる現在、外部設計の重要性がより増しているのは間違いない。ところが外部設計の体系化はIT業界だけでなく、学術研究でも進んでいないのが現状だ。ベンダーによって用語や設計方法が異なり、ユーザーの混乱を招くケースもある。
そこで当社(NTTデータ)は「業務部門の専門家が理解できる外部設計書の作成」を目指し、ベンダー各社に共同作業を呼びかけた。富士通、NEC、日立製作所、構造計画研究所、東芝ソリューションの5社が応じ、当社を含む6社で2006年4月に「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」を発足させた。07年8月から日本ユニシス、OKI、TISの3社も合流した。こうして08年3月に完成したのが、発注者ビューガイドライン(以下、ガイドライン)である。
ガイドラインは画面編、システム振舞い編、データモデル編で構成する。順に画面、業務フロー、データ・モデルに関する設計書の書き方やレビューの進め方の「コツ」をまとめている(図1)。掲載したコツは合計187個ある。ガイドラインはあくまでノウハウ集であり、外部設計の手順や設計書の書式を定義した「開発標準」ではない点に注意が必要だ。
外部設計は、ITベンダーが中心に実施するケースが多い。ただし、情報システム部門がユーザー部門をリードして進めることもある。その場合は、ベンダーとレビューを進める際のチェック項目として、あるいはユーザー部門を相手に設計を進める際のノウハウ集として利用できる。
以下、画面編、システム振舞い編、データモデル編に掲載した代表的なコツを中心に、ガイドラインの概要を説明していく。ガイドライン本体は検討会のWebサイト無償でダウンロードできるので、併せてご覧いただきたい。