英ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは2008年後半から,画面デザインに優れた「Flash Lite」と,機器の制御を得意とする「J2ME」を同一アプリケーションから利用できる仕組みを携帯電話に組み込む。狙いはFlashコンテンツに慣れたデザイナを携帯電話のインタフェース開発に呼び込むことだ。
Flash Liteはビジュアルなユーザー・インタフェース(UI)を実装する用途に向いている。その一方で携帯電話が搭載する無線LANやBluetooth,各種センサーなどの周辺機器を制御したり,情報を受け取る機能は備えていない。これら周辺機器との連携のためのAPIが用意されているJ2MEなら,携帯電話の細かい部分までを制御できる。
そこでソニー・エリクソンが打ち出したのが「Project Capuchin」という機構だ。同社の携帯電話でJ2MEのアプリケーションからFlash Liteのコンテンツを呼び出して使えるようにする(図1)。例えば,電話をかける制御は同一のJ2MEプログラムを使いながら,UI部分のFlash Liteコンテンツ(.swfファイル)を入れ替えて,全く異なる見た目にできる(写真1)。「ミドルレンジ以上のクラスには2008年後半以降に搭載する。最終的にはすべての端末で動作するようにしたい」(同社ロングターム・プラットフォーム・プランニング-Javaプラットフォーム・プランニング ディレクタのクリストファー・デビッド氏)。
UIの出来が製品の優劣を決める
同社がこの仕組みを採用するのは「世界中のデザイナに携帯電話のUIの開発をしてもらいたい」(デビッド氏)からだ。現在,同社にいる2万5000人近くの携帯電話開発者の多くは,開発にJ2MEを使っている。その仕事の多くは,通信事業者の仕様や要求に応えるためのアプリケーションの開発やチューニングなど。UI部分に割ける時間はほとんどない。
だが今後はUIの出来が製品の優劣を決めると同社は考えている。「外部のデザイナを取り込むには,彼らが最も作りやすい環境を用意する必要があった」(デビッド氏)。そこでFlashと同じ感覚で作れるFlash Liteを選んだ。
同社はAPIの仕様や開発ツール,サンプル・コードなどを開発者向けWebサイト「Sony Ericsson Developer World」で順次公開する。仕様はすべてオープンで,競合他社端末への搭載も奨励する。ただし,この仕組みを用意するのは,グローバル用端末に対してだけ。日本専用端末には,今のところ実装の予定はない。