猛暑である。7月26日には岐阜県多治見市で最高気温39.0度,愛知県東海市で38.4度を記録。27日には大分県豊後大野市で最高気温39.0度となった。その影響で各地で熱中症による被害が相次ぎ,26日だけでも4人の死亡が確認されている。

 暑さによって電力消費量も大きく伸びる。中部電力では7月25日の午後3時の最大電力が2803万kWとなり,過去最高を更新した。家庭やオフィスで冷房設備などの利用が大きく増えたためという。

 省エネだ,クールビズだと言っても,暑さで体の具合が悪くなっては元も子もない。エアコンが必要なときはぜひ使うべきだ。筆者はそう思う。だが問題は,“エアコンをつけるかどうか”を誰が判断するかである。

払い過ぎていませんか?電気料金

 我が家の“エアコン主導権”を握っているのは子供たちである。この輩がじつに我慢強い。今,中学3年と小学5年なのだが,ニュースを見るようになり,若干の知恵もつき始めたのか,「地球温暖化って,マジ,ヤバいんだよね」などと一人前に論客ぶったりする。子供たちが環境問題に目覚めてしまったおかげで,“エアコン主導権”も完全に握られてしまった。筆者が「暑い~」とエアコンのボタンを押そうとすると,「だめ!電気を使うとCO2が出るんだから」と執拗に“待った”をかけてくる。

 こうしたにらみ合いが続き,結論から言うと,我が家ではこの夏,まだ1度もエアコンをつけていない。拙宅がある千葉県も7月12日以降,最高気温が連日30度超,最低気温が25度以上の熱帯夜も6日あったが,いまだにエアコンのオン/オフ・ボタンは封印されたままである。

 実は,子供が主導する我慢大会に筆者が付き合っているのには,もう一つ理由がある。電気代の削減である。拙宅ではエアコンだけが「低圧電力200V」の電力系統で動いているため,その使用・不使用が電気代に大きく跳ね返ってくるのだ。

 ちょうど10年前,自宅を建て替えたときに電気式の中央冷暖房装置をエアコンとして入れた。部屋ごとの個別空調に比べて手入れが非常に楽になる,という話にほだされたからだが,確かにその通りだった。2階天井にある吸入口フィルターをまめに掃除するだけで,ほぼメンテナンス・フリー。冬場に灯油で手を汚すこともなく,家中にまんべんなく暖かさや涼しさが行き渡るのも心地いい。

 だが大きな落とし穴があった。通常の「従量電灯100V」の契約のほかに,エアコンの動力専用に「低圧電力200V」の契約を電力会社と結ぶことになったのだが,後者の基本料金が月額5355円(5kW)とやたら高い。冷蔵庫や照明などの電気をまかなう「従量電灯100V」の基本料金1365円と比べると格段の差がある。

 さらに言うと,家族の省エネ意識もあって,我が家のエアコンが稼働するのは,夏場は7月10日~9月10日の2カ月間(今夏はまだ未使用!),冬場は12月10日~4月10日の4カ月間の合計6カ月間である(毎月10日前後にメーター計測の方が来るのでこうした運用になっている)。実に1年のうち半分はエアコンが休眠状態であるにもかかわらず,高い基本料金を払い続けなくてはならない。

 東京電力の料金システムによると,その月の電力使用量が0kWhであれば,基本料金は半額になる。まったくお恥ずかしい話だが,筆者はこの事実を入居してから6年間も知らなかった。いや,正確に言えば,入居して2年目に,高い基本料金に疑問を持ち,東京電力のカスタマーセンターに問い合わせたことがある。「設備を使用しない月でも基本料金は変わらないのでしょうか」と尋ねると,当時の担当者は「電力は年間契約ですので,特定期間だけ使用しなくても基本料金は変わりません」と答えただけで,ブレーカーを落として電力使用量を0kWhにすれば基本料金が半額になることは教えてくれなかった。

 その後,6年目に東京電力のホームページを見て「電力使用量が0kWhならば基本料金は半額になる」という事実を知った。基本料金の半額の2677円×6カ月×6年間=9万6372円,つまり10万円近くも,節約できる電気代を支払っていたわけである。ああ,悔しい。

 そもそも,エアコンを使用しない時期に,屋内のブレーカーだけを切って,屋外のブレーカーを切らなかったのが敗因だった。屋内のブレーカーを切っただけでは微量の電流が流れ,メーターには毎月20kWh程度の使用量が計測されていたのである(これを筆者は送風装置の電力消費と勘違いしていた)。しかし,東京電力も設備の不使用に気づいて「屋外のブレーカーを切ってはどうか」と注意を促してくれてもよさそうなものではないか。電力ももったいないし──と,今更ながらひがんでしまう。「低圧電力200V」の契約をしている方はぜひ一度点検していただきたい。

まだまだ続く?暑さ我慢大会

 さて,筆者は7月25日の晩,あまりの暑さに耐えかねて,ついに屋外のブレーカーを開いた。いざエアコンのボタンを押そうとしたところ,また中学3年の長女が飛んできて,「何でつけるの。ぜんぜん暑くないよ」と言う。受験勉強で一番たいへんな本人が言うのだからと,そのときもついにボタンが押されることはなかった。

 人間の体とは不思議なもので,33~34度の暑さも,慣れると何とか過ごせるものである。「これなら今月もエアコンなしで乗り切れるかも」と思い,7月27日になってあわてて屋外のブレーカーを切りにいった。だが,エアコン未使用にもかかわらず,2日半の間にしっかり6kWhもメーターが回っていた。これで8月分の基本料金は,満額の5355円でまちがいなし。ならば,エアコンをつけて大いに快適に過ごそうと長女に提案したところ,「せこい。我慢できる暑さだからエアコンをつけないのと,料金とは関係ない」と,また反対されてしまった。

 おかげで未だに我が家のエアコンは休眠状態である。電力会社がエアコンをつけずにがんばった人のための料金メニューを作ってくれたら,もう少し暑さ我慢大会に張り合いも出るのだが。例えば,月の電力使用量が50kWh以下なら基本料金を2割引にするとか・・・。ぜひ検討してほしい。