最後に、選択したスマートフォンの導入・運用コストから、導入効果に見合うのか評価する。スマートフォンを企業で使うには、端末関連の費用以外にサーバー費用やソフトウエアの使用ライセンス料も必要だ。特に運用管理費は前述のように、セキュリティ・レベルによって大きく異なる。

BlackBerryは月額課金

 BlackBerryはオールインワンの製品のため、契約すればメールやスケジュールの同期、セキュリティ機能、運用管理機能は標準で使える。端末以外の追加投資が必要ないのはメリットとなる。ただ、通信費とは別にサーバー使用料として1台当たり月額3570円が別途かかる。

 WM端末やSymbian端末を採用して強固な管理機能を実装する場合は、IntelliSync Mobile Suiteなどサードパーティのソフトウエアを別途購入する企業が多い。また、モバイル環境からアクセスするグループウエア製品が「IBM Notes/Domino」であると、現状ではサードパーティ製ソフトウエアが必須となる。

 IntelliSync Mobile Suiteは使用する機能のコンポーネントの組み合わせで料金が変わる。標準的な組み合わせであるメール同期の「Wireless Email」とデバイス管理の「Device Management」を選択した場合は、1ユーザー当たり1万9800円(50ユーザーから)の導入費と年間保守料(導入費の18%)が必要だ。

パケット量と定額プランを考慮

 通信料金を考えるときは、エンドユ ーザーがメールの送受信やWebサイトの閲覧でどの程度データを送受信するのか、パケット量を考慮したい。例えば、アイエヌジー生命保険は事前に、どの程度の通信量になるのかデータを収集した。その結果、営業担当者がメールの同期を中心に利用した場合、1人当たりの平均通信量は月間20万パケットだったという。

 通常、スマートフォン向けにはパケット料金の上限を設けたプランが用意されているが、NTTドコモとソフトバンクモバイルはその上限が一般のパケット定額よりも高額になる(図4)。また、通信事業者を選ばないノキアのE61などのSIMフリー端末ではこれらの定額プランは適用されない。

図4●通信事業者別に見た、法人向けスマートフォンの契約プラン<br />スマートフォンでメールやスケジュール連携、Webサイト閲覧、音声通話を利用することを前提として、通信事業者別に基本的な契約プランを作成した。社内の内線的な利用も考慮し、同一法人契約の端末間の無料通話が可能なオプションを追加した。なお、月に利用するパケット量の目安として、アイエヌジー生命保険の営業担当者がメール中心にスマートフォンを利用した場合のパケット量、約20万パケットをプロットした
図4●通信事業者別に見た、法人向けスマートフォンの契約プラン
スマートフォンでメールやスケジュール連携、Webサイト閲覧、音声通話を利用することを前提として、通信事業者別に基本的な契約プランを作成した。社内の内線的な利用も考慮し、同一法人契約の端末間の無料通話が可能なオプションを追加した。なお、月に利用するパケット量の目安として、アイエヌジー生命保険の営業担当者がメール中心にスマートフォンを利用した場合のパケット量、約20万パケットをプロットした
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 やや特殊なのがBlackBerryである。BlackBerryでは定額プランを適用できないが、サーバーでデータを圧縮して端末に送信するので実際のパケット量は少ない。このため、「メール中心に利用して、1カ月で4Mバイト(約4万パケット)程度。料金が青天井になる心配はない」(NTTドコモ 法人ビジネス戦略部スマートフォンセンター兼務の松木彰技術戦略担当部長)という。