次に、セキュリティと運用管理機能から端末を検討する。セキュリティでは、紛失時に遠隔地から端末の操作をロックしたりデータを消去したりする機能が重要だ。また、端末にデータを保存する場合、データの暗号化も必要になる。これらの機能の有無やその柔軟性は端末が搭載するOSと通信事業者で決まる。

 一方、運用管理では、アプリケーションの一括アップデートや機能の使用制限といった端末の一括設定、利用状況の遠隔確認といった機能がOSごとに異なる。例えば、社内の情報漏洩防止のために、カメラ機能や外部メモリーの利用可否を制御する機能が必要であれば、これらの運用管理機能の充実が重要なポイントになる。

オールインワンの製品も

 セキュリティ、運用管理機能の充実では、端末と管理サーバーをセットで提供するオールインワン型のBlackBerryが抜きん出る。

 BlackBerryの場合、スマートフォン端末と社内サーバーを同期するサーバ ー「BlackBerry Enterprise Server」で端末を一括管理する。端末ごとに使用できるアプリケーションなどの細かい設定が可能だ。保存データや通信はすべて暗号化され、さらに受信したメールに対して「24時間で自動的に消去」「10時間電波が届かなかったら端末内のメールを消去」といった設定もできる。

 とはいえ、外部への持ち出しが少なく、導入数も少ないならば、BlackBerryほどのセキュリティ、運用管理性は必要ない。データの遠隔削除といった基本的な管理機能ならば、WM端末とマイクロソフトのグループウエア・ソフト「Exchange Server」を組み合わせるだけでも対応できる。

強固な管理を実現するソフト製品

 使い勝手の面でWM端末やSymbian端末を使いたいが、セキュリティや運用管理性も重要という場合は、サードパーティのソフトウエアを利用する。多くの企業が選択しているのがインテリシンクの「Intellisync Mobile Suite」である。このソフトは、WM端末とSymbian端末にメールの同期機能と端末の管理機能を提供する。ただ、導入に当たってのテスト工数などが増えるため、BlackBerryよりも導入時のハードルは高くなる。

 なお、WMは管理ソフトの充実が進んでおり、今後はBlackBerryと同等なレベルに追いつきそうだ。例えば、システム開発ベンチャーのアヴァンティは5月21日にWMの端末向けにBlackBerryに近い機能を提供する「MobiControl」を発表、ウィルコムとともに販売していく。また、NTTドコモはF1100専用に、セキュリティや端末の一括管理など管理機能を強化した実験サービスを6月以降に開始する。

 マイクロソフトも3月に米国で、“BlackBerryキラー”と位置づけたスマートフォン用OSの最新版「Windows Mobile 6.1」と端末管理機能を搭載したサーバー製品「System Center Mobile Device Manager 2008」を発表した。これらを組み合わせれば、メモリーカードやカメラ機能などのデバイス管理、端末管理、セキュリティ機能など、必要な機能をオールインワン・パッケ ージとして利用できる。さらに、基幹システムとの連携が容易になるため、今以上にさまざまな業務でスマートフォンを活用できそうだ。日本では6月以降に発売するもようだ(図3)。

図3●スマートフォンでメッセージ/スケジュール同期を利用する代表的なシステム構成<br />端末に搭載するOSによって、取り得るシステム構成が変わる
図3●スマートフォンでメッセージ/スケジュール同期を利用する代表的なシステム構成
端末に搭載するOSによって、取り得るシステム構成が変わる
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