まず、「どこ」でスマートフォンを利用するのかを決めれば、採用すべき機種はかなり絞られる。通信事業者によって利用エリアが異なるからだ。

 国内では現在、NTTドコモ、イー・モバイル、ウィルコム、ソフトバンクモバイルの4社がスマートフォンを販売している。KDDIは2008年後半にスマートフォンを市場に投入する予定だったが、投入時期が遅れそうだ。

 NTTドコモやソフトバンクモバイルは、携帯電話サービスでエリアを広げていたことから、全国的にカバーしているというメリットがある。一方、ウィルコムは地方部のカバー・エリアが狭いという欠点がある。イー・モバイルはウィルコムよりもさらにエリアが狭い。大都市圏であればおおむねカバーしているが、それでも一部を除くと地下鉄の駅構内などは圏外となる。

 また、海外出張の有無も確認したい。ほとんどの国に対応した国際ローミング・サービスは、事実上ソフトバンクモバイルとNTTドコモの一部機種のみとなる。

メール中心なら片手操作が基本

 利用する通信事業者の選定が進んだら、次に「誰」が「どの業務」でスマートフォンを利用するのかといったポイントで使用する機種を絞ろう。ここで重要なのが、ユーザー・インタフェース(UI)だ。

 まず、メール連絡や日報記入といった文字入力が利用の中心ならば、移動中でも使いやすいUIを持つ機種を選ばなければならない。

 電車での移動中に立ちながら片手で文章を打つ場合、携帯電話と同じキー配列の「ダイヤルキー」が独立した機種が最適だ。携帯電話での文字入力に慣れている若い世代にはハードルが低い。例えば、NTTドコモのF1100やHT1100、ソフトバンクモバイルのX02 NK、X03HT、ウィルコムのAdvanc-ed/W-ZERO3 [es]といった機種は、ダイヤルキーを搭載している。なかでもF1100やHT1100、X02NKはパソコンのキー配列に近い横長のキーボード、いわゆる「QWERTYキー」をなくし、小型軽量化に特化した。

 移動時は文字入力をせず、メールやスケジュールの閲覧といった情報取得ができればいいというのであれば、イ ー・モバイルのEMONSTERやNTTドコモが提供するカナダのリサーチ・イン・モーションのBlackBerry、ソフトバンクモバイルのX02HT、X01Tなどが選択肢に入ってくる。これらの機種は、片手での操作性を突き詰めたホイール式やタッチ操作式のスクロール機能が特徴だ。

業務支援はタッチ式が選択肢に

 次に、在庫管理など現場担当者の業務支援用途で利用する場合、「文字入力よりも、プルダウンメニューから選択したり、ボタンをクリックしたりする作業が多い」(シンエイの加藤ゼネラルマネージャー)。この場合、直接触れて入力するタッチパネル機能や画面のサイズを重視したい。

 現行のスマートフォンの場合、タッチパネル機能が利用できるのはWMを採用する端末のみ。しかも、「WM6 Standard Edition」というタイプのOSを搭載した機種はタッチパネルを利用できないので注意が必要だ。

 画面サイズでは、通話機能がないイ ー・モバイルのEM・ONEαが4.1インチでトップだ。通話可能な端末では、ウィルコムのW-ZERO3、Advanced/W-ZERO3[es]が続く。ただし、ウィルコムは通信速度が遅く、ブラウザによるWebアプリケーションの利用には向かない。

 プリンタやバーコード・リーダーなどの外部機器を利用する場合、周辺機器の対応も重要なポイントだ。外部機器を直接USBで接続して使うには、スマートフォンが「USBホスト」に対応する必要があり、対応機種が少ない。

 無線規格のBluetoothによる機器間の接続なら、多くの機種が対応する。ただし、「店舗内の無線LANへの干渉を防ぐためにBluetoothの利用をあきらめた」(シンエイの加藤ゼネラルマネ ージャー)という事例もあり、使用場所によっては特殊な事情が障壁となり得ることを考慮しておきたい。