「業務の効率化を考え、スマートフォンをMR(医薬情報担当者)2400人全員に貸与する予定だ」(ファイザー ビジネステクノロジー・ジャパン BTセールス&マーケティング部の岡崎昌雄統括部長)。製薬会社のファイザーは他国の拠点に先駆け、まず日本でスマートフォンをMR向けに導入する。2008年中の運用開始を目指して、今まさに製品選択の真っ最中だ。
新たなクライアント端末として、スマートフォンが企業で活用され始めている。スマートフォンは、いわば“携帯電話以上パソコン未満”の端末で、両者の機能をいいとこ取りした特徴を持つ。音声通話ができ、外出先でもセキュアにメールを閲覧できる。パソコンのような使い勝手で社内システムと連携できる。しかも、パソコンよりも軽く小型で起動に時間がかからない。移動中やわずかな空き時間に、オフィスと同様に業務に取り組める(図1)。
利用シーンは2つの業務
スマートフォンの利用シーンは、大きく分けて2つの業務に分類できる。1つは、顧客先を頻繁に訪問しほぼ1日中オフィス外にいる営業担当者や保守担当者など“外回り”向けだ。メール送受信とスケジュール機能、日報の書き込み、社内データベースへのアクセスといった業務利用が主となる。電気・電子機器などの安全性や品質を認証する第三者認証機関のテュフズードジャパンのように「ノートパソコンと通信カード、携帯電話を持たせていたが、スマートフォンなら1台で済む」(シニアITアドミニストレーターのマーティン エベルIT担当)といった利便性の向上目的での採用が多い。
最近は、人材紹介会社のエン・ジャパンが「携帯電話の小さな画面ではデ ータベースの活用や日報の記入は不便。スマートフォンは選択肢の1つ」(管理本部情報システム部の高橋康正部長)とするなど、携帯電話からの乗り換えを検討する企業もある。
もう1つの利用シーンは、流通の配送担当、倉庫や百貨店などで在庫管理担当といった作業現場担当者向けの業務支援端末としてだ。婦人靴の企画デザイン・販売を手掛けるシンエイは、「Windows CE端末を使っていたが、端末が入手できなくなったことを契機にスマートフォンに移行した」(経営企画部・システム開発グループの加藤義則ゼネラルマネージャー)と振り返る。シンエイのように、従来活用していたハンディターミナルやWindows CE搭載の端末から乗り換え、在庫管理や現場支援の端末として導入する企業は多い。