今年で第9回目を迎えた「e都市ランキング」。昨年の調査から、新型インフルエンザに関する情報の掲載についての設問を加えた。新型インフルエンザとは、鳥インフルエンザ・ウイルスが変異して、人に感染するようになったウイルスによる疾患を指す。厚生労働省は、新型インフルエンザが大流行した場合の死者を17万人~64万人と推定している(「新型インフルエンザ対策行動計画」より)。

 昨年の「e都市ランキング」調査では、「現状では市区町村の新型インフルエンザの情報提供は進んでいない」と言わざるを得ない状況が明らかなった(関連記事)。そのときの結果を見ると、新型インフルエンザに関する情報をWebサイトに掲載している自治体は9.1%、発生時の行動計画を掲載している自治体は2.5%にとどまっていた。

 1年後の今回は、「昨年からほとんど進展がない」という結果となった。新型インフルエンザに関する情報をWebサイトに掲載している自治体は10.8%と微増したが、発生時の行動計画を掲載している自治体は2.2%とむしろポイントは下がった。

図●新型インフルエンザの情報をWebサイトに掲載している自治体
自治体の情報発信意欲は昨年同様低調だ。
図●新型インフルエンザの情報をWebサイトに掲載している自治体

 例えば、北海道小樽市、兵庫県明石市のように、Webサイトなどを通じて新型インフルエンザ情報や市の対応を積極的に周知する自治体もあるが、全体的に見ると新型インフルエンザについての情報発信意欲は低いようだ。

高まる関心、各自治体に求められる情報の周知

 この調査は今年5月末時点での実施状況を聞いたものだが、その直後の6月に入って、関連して新しい動きが出てきた。まず6月17日に、日本経済団体連合会(経団連)が「新型インフルエンザ対策に関する提言」を発表、ワクチンの早期開発・製造、抗インフルエンザウイルス薬の国家備蓄などを求めた。提言では、地方自治体に対して「感染症対策の機能拡充を図るとともに、各地において早急に方針を取りまとめることが期待される」としたうえで「各地域の事業者に対する情報提供、周知を求めたい」との要請がなされている。

 6月26日には、八都県市首脳会議(座長:中田宏 横浜市長。参加団体は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市)が「首都圏における新型インフルエンザ対策の充実強化等について」の要望書を国に提出した。自治体における対策推進のための具体的な各種基準、指針、治療法などの提示を国に求めたものだ。

 このように新型インフルエンザの認知・関心は高まりつつある。地方自治体においては、各地域における対策と、その対策の住民への周知が求められてくるだろう。