今回はプロジェクトを円滑に運営するために重要な情報の受発信を取り上げる。多種多様な情報伝達手段がそろう現代にあっても、「必要な情報が必要な相手に正しく受け取られるとは限らない」という古来不変の事実をしっかり認識し、コミュニケーションの充実に努めたい。適切な報告の授受のためには、報告する側と受ける側、双方の努力が求められる。

281日目●情報は発信しないと伝わらぬ

 いくら情報網や通信手段が整備されても、情報保有者が発信しない限り、だれも受信はできない。情報過多はよくないと言われるが、伝えるべき情報が発信されないことは、組織上もっと困ることになる。遠隔地にいる人は、情報源にいる人が想像する以上に、情報不足にいら立っているものだ。

 顧客サイトにいるベンダーのSEも、自分の会社の情報がとかく伝わらず悩まされることが多い。情報を持っている組織が、各サイトのSEに意識的に情報を流していく気配りを持つ必要がある。逆にサイトで起こっている事故などの状況については、現場にいない社内の関連部署は情報不足に悩まされている。事故サイトからも情報発信に気を配らないと、あちこちから状況問い合わせが殺到し、事故対策に悪影響を与えてしまうこともある。

 プロジェクト運営においても、プロジェクト・リーダーや統括部隊の人は、積極的にプロジェクト全体の動きをメンバー全員に伝える努力をすべきだ。


282日目●情報は受け止め方で変わるもの

 情報は、発信者が発信した内容ではなく、受信者が受信した内容で決まる。発信者の意図とは無関係に、受信者の受け止めた通りに情報は伝わっていく。何か問題が起きると、「前から言っておいたのに」と、よく言われるが、これは、言った人の一人よがりである。

 相手がきちんと聞いていないと文句を言うより、いかに話せば自分の意思が正しく伝わるかを常に追求しなければならない。緊急を要する重大事項なら、自分が言ったことを相手がどう受け止めたかまで確認しなければ、伝えたことにはならない。

 逆に受信者も、「ハイ、ハイ」と相づちを打つだけでなく、自分自身の言葉で、「要するに、…ということですか?」と問い返すくらいの気配りがほしい。


283日目●受けたならこう受けましたと返事せよ

 情報の中身が受け取り方によって決まる以上、情報を受けた側は、何らかの返事をする義務がある。特に、複雑な内容や厳しい内容については、受信者が、自分の言葉で「こういうことですね」と再確認するくらいの気持ちにならないと困る。返事がないと伝わったことにならないのだ。

 幸いメール時代である。返信を書くのも簡単になり、受信したら返信するのが当たり前と考えられるようにもなっている。メールの普及が、「情報を受信したら必ず返事を書く」という良い習慣を身に付けさせてくれるのではと期待している。

 また最近、メールで「打ち合わせを午後4時から実施するのでよろしく」との依頼があった際に、「14時に参ります」と間違った返事をしてしまったことがある。すると先方からは、「もう少し遅らせてください」との返事があり、自分がとんだミスをしていたことに気付かされた。4時と入力したつもりが14時になってしまったという、お粗末な事例だが、間違ったことで約束時間が再確認されるという恥ずかしい効果もあったのだ。


284日目●情報は待っていないで取りに行け

 情報保持者が発信してくれないと、情報が獲得できない以上、受信者は積極的に情報獲得に乗り出さざるを得ない。いい情報チャネルの維持と有効な情報源のスキャニングを実施する必要がある。そのためにも、普段は離れたオフィスや顧客サイトを仕事場とするSEが本社に出張するようなときは、仕事に直接関連する職場だけでなく、管理部門にも顔を出し、最近の情報の収集に努めたほうがよい。