Partha Iyengar氏
米Gartner
Vice President Distinguished Analyst
Partha Iyengar氏

 言い古された言葉だが、グローバル化という社会経済の流れは本物だ。米Gartnerのアナリスト、Partha Iyengar氏は「我々の目の前に、まったく新しい世界が拓かれようとしている」と語る。壮大な技術と経済の実験場と化したインドと中国の動向を中心に、危機そしてチャンスも呼び込む新たなグローバル化の潮流をIyengar氏が紹介する。
(編集・構成は矢口 竜太郎=日経コンピュータ)



 現在、インドと中国は、壮大な実験場となっています。この2カ国は、今まで誰も試みたことがないことをしようとしているのです。両国とも古い歴史を持つ国で、過去、世界の覇権を握ったこともあります。そして今また、歴史を大きく変えようとしています。「我々対彼ら」という構図だと言いたいわけではありません。両国を大いなる脅威だと見ることもできますが、同時に、またとないチャンスだと見ることもできます。みなさんの目の前に、まったく新しい世界が拓かれるのです。

 まったく新しい世界とは何でしょう。これから登場してくる、小規模で敏捷な新興勢力――これら新興国に生まれる新興勢力によって、今、みなさんが取引しているメガベンダーが絶滅の危機に瀕する世界となるのです。

 みなさんはすでに、タタ・コンサルタンシー・サービシズ、インフォシス・テクノロジーズ、ZTE、ファーウエイといった企業の名前を耳にされたことがあるはずだと思います。では、これらの企業が「今後、みなさんの企業と取引するメガベンダーとなる」「みなさんの事業の鍵を握る企業となる」「みなさんの会社の命運を握る企業となる」と考えていますか?これらの企業をそこまで信用できますか?

 みなさんの用意ができていようがいまいが、みなさんの会社の将来も、みなさんのキャリアも、彼らにかけるほかないのです。みなさんの会社を前進させる次世代のイノベーションは、これら新興国のベンダーが提供するからです。

Partha Iyengar氏

 彼らのどこが革新的なのだとお思いかもしれません。2006年にインフォシスが採用した社員は3万8000人で、採用のために処理した履歴書は100万通にのぼります。それがイノベーションなのかとお疑いですか?もちろんイノベーションです。エコノミスト誌は、これこそがインド企業が持つ秘密の「競争力」だと表現したほどです。

 これが差異化要因として大きく効果を現すのは、随一の成長速度を誇るセグメント、ITサービスの分野です。過去30四半期、この分野のトレンドを見れば、インドをリードするサービスプロバイダー各社の成長に関する数字が、大きくゆがめられていることがわかります。

 小さな会社なら、急成長するのも簡単だってお思いでしょうか。大間違いです。これらのプロバイダーは、いずれも年商10億ドルを超えており、最大のオフショアプロバイダーなどは年商50億ドルを超えています。そしてなお、35%を超える成長を見せているのです。この大きさでこれほどの成長を実現した例は、近代、ありません。どの産業においても。今までかつて一度でも。

 しかも、その影響力はIT業界にとどまりません。タタは先日、世界で最も安い車、Nanoを発売しました。たったの2900ドルです。