上司にもらった営業の心得をノートに張っている。「有能な営業の七つの資質」と「買い手(顧客)の九つの質問」が書かれている |
林が日頃から腐心する仕事の一つが、自社が誇るSEの技術力を最大限に発揮できるようにする環境作りである。顧客の担当者とSEの意思疎通を円滑にする仕掛けはその際たるものだ。「SEはもっと顧客と直接に意見を交わしたいと思っている。そこで顧客の担当者とSEが一緒に飲む機会を必ず設ける」と林。「さ細なことだが、これだけでも顧客とSEの双方ともに仕事が進めやすくなる」と続ける。
「気配り上手な営業」としてチームをけん引する林だが、「転職して1年半はダメ営業だった」と打ち明ける。「営業計画の立案や上司を同行させる効果的な時機など、案件発掘から受注までの営業の役割を感覚的にしか分かっていなかった」からだ。
営業の基本を叩き込まれたことで、林は開眼する。入社後1年半に経験した数百台のPCのリプレース案件では、林はまずメーカーの協力を得ることに注力。絶妙なタイミングで顧客の担当者とメーカー側の事業部長を引き合わせる機会を作った。さらに顧客が望む分割納品も、社内の品質管理センターの協力を取り付けて実現させた。
「営業の役割を最高のタイミングで果たせたからこそ受注できた案件だった」(林)。この案件をきっかけに、林は次々と大型商談を受注。気が付くと連続して予算を達成する力を付けていた。
林のノートの1ページ目には入社当時の上司にもらった営業の心得が書かれたメモが張られている。営業の基本動作や、「顧客は営業に何を求めるか」をチェックするための顧客の質問などを記したものだ。「うまくいかないときは必ずチェックする」と林。基本を忘れない謙虚さも林の営業力の源泉である。
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