データをバックアップしたり,持ち運んだりする際には,各種記録メディアを使うことが多い。業務利用の場合には,それらに個人情報や機密情報など重要な情報を収めることも少なくない。記録メディアを処分する際には,情報漏えいが起きないように十分注意する必要がある。不用意に捨てると,悪意を持つ第三者に中身を読み出されてしまう恐れがあるからだ。

 処分に際して,一般にはデータ消去ソフトを使ってデータを読み出せなくしたり,廃棄業者に依頼して記録メディアを裁断したりする。こうした方法は安全なものの,相応の手間やコストがかかる。もっと手軽にデータを破壊できないものか。

 それを調べるため「テープ・カートリッジ」「CD-R」「USBメモリー」の3種類の記録メディアを対象に「水没させる」「損傷させる」「加熱する」という作業を施し,データを読み出せなくなるかどうか検証した注1。その結果,テープ・カートリッジは損傷や加熱により,CD-Rは加熱により,そしてUSBメモリーは損傷によりデータを100%破壊できた(図1)。

図1●「水没」「損傷」「加熱」した記録メディアのデータ破壊成功率<br />記録メディアに保存した全データ容量を100%としたときの,復旧できなかったデータの割合。テープ・カートリッジは損傷や加熱により,CD-Rは加熱により,そしてUSBメモリーは損傷によりデータを100%破壊できた
図1●「水没」「損傷」「加熱」した記録メディアのデータ破壊成功率
記録メディアに保存した全データ容量を100%としたときの,復旧できなかったデータの割合。テープ・カートリッジは損傷や加熱により,CD-Rは加熱により,そしてUSBメモリーは損傷によりデータを100%破壊できた
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 検証に使用した記録メディアは,テープ・カートリッジがTDK製でLTO Ultrium 1規格のもの。CD-Rが同じくTDK製で容量700Mバイトのもの。USBメモリーがアイ・オー・データ機器の「EDU3-512M」である(図2)。テープ・カートリッジとCD-Rには,111個のPDFファイル(647Mバイト)を保存して復旧対象のデータとした。またUSBメモリーには,81個のPDFファイル(476Mバイト)を保存して復旧対象のデータとした。いずれも現場で一般的に使われているものだ。

図2●実験に使用した3種類の記録メディア
図2●実験に使用した3種類の記録メディア
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 一度データを読み出せなくなった記録メディアからデータを復旧するには,記録メディアをクリーニングしたり,修理するなどの作業が伴う。検証は,こうした作業に長けたデータ復旧サービスの専門会社 アドバンスドテクノロジーに依頼して実施した。作業時間を最大5日間と定め,その期間内で復旧できるデータの割合を調べた。

 以下,それぞれの検証内容とその結果を解説する。

【テスターから】濡れたテープはそのまま専門会社へ
寿命は短いと考えるのが安全

 以前の「検証ラボ」で,ハードディスクが水に濡れた場合には,ミネラルの固着を防ぐために,濡れたまの状態で専門会社に持ち込むことを勧めました。この原則は,テープ・カートリッジにもそのまま当てはまります。テープは,乾いて固着したミネラルを研磨により完全に取り除けるほどの強度を持っていないからです。

 当社に持ち込まれるテープ・カートリッジは,ほとんどが摩耗によってデータを読み出せなくなったものです。テープは常にヘッドに接触して,摩耗し続けます。テープの寿命は,思いのほか短いと考えた方が安全でしょう。

 CD-RやUSBメモリーは,問い合わせ件数と,実際に持ち込まれる件数との開きが顕著です。復旧費用が高価だと感じられるようです。

 今回の検証は,企業の夏休み明け時期と重なったことから,予想以上に多忙な中での作業になりました。夏休みを挟んでマシンの電源断/電源投入が行われるため,例年その時期にはマシンに障害が起きやすく,多数のハードディスクが持ち込まれます。この夏は,それが予想以上に多かったのです。普段からバックアップを取っておくことが大切です。(アドバンスドテクノロジー 金田 龍介氏)

■変更履歴
囲み記事の表現に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/08/05 16:45]