セキュリティに関してHP Miniは、同社の一般的な企業向け製品とほぼ同等の機能を搭載する。具体的には管理者用のパスワード設定、BIOSパスワード、ハードディスクの暗号化などが可能だ。落下や大きな揺れを関知してハードディスクを保護する機能も備える。

 運用管理面ではネットワーク経由での電源オン/オフが可能。システム運用管理の標準仕様「SNMP MIB II」に準拠しているため、一般的な運用管理ツールを使って資産管理ができる。最近の企業向けノートに増えている指紋認証装置は搭載しないが、システム管理者に余計な手間をかける心配はなさそうだ。

 システム管理者にとってはOSの種類も気になるところ。Windows XPを使いたいなら5万9850円の標準モデルではなく、7万9800円の上位モデルを選ばざるを得ない。

 これには少し説明がいる。HP Miniの標準搭載OSはどちらのモデルでも「Windows Vista」だが、エディション(版)が異なる。このうち上位モデルの「Business」版は、日本HPがXPへのダウングレードサービスを提供している。だが、標準モデルの「Home Basic」版には、その用意がない。

 日本HPは同社の企業向け製品と同じ体制でHP Miniをサポートする。標準で1年間の引き取り修理や部品の保証、平日午前9時から午後5時までの電話サポートなどを提供する。

 こうしてみていくと、HP Miniは思った以上に企業でも使えそうだ。少なくとも同機種に関する限り、6万円ノートに安物感はない。

 VIA製プロセサなどの安価な部品を使っているが、大事なところではけちっていない印象だ。年間5000万台のパソコンを販売するHPの「規模の経済」が、部品調達から生産、物流に至る各工程で効いているとみられる。これまでに全世界で30万台を受注した。松下の国内年間出荷台数を3カ月で売り切ったことになる。

 改善点は残るが、既存製品の半額以下というのは企業にとってもやはり魅力。6万円ノートはじわり企業に浸透しそうだ。

国産大手は期間限定割引で対抗
図A●富士通が6月上旬に出した新聞広告
図A●富士通が6月上旬に出した新聞広告

 「今だけのお買い得!ワイドノートが5万円台」「SOHO・個人事業主の皆様に、ノートPCが5万円台」──。6月初め、全国紙の朝刊に掲載された全面広告には派手な宣伝文句が並んだ。これはNECと富士通がそれぞれ始めた期間限定割引キャンペーンの告知広告。いずれも中堅・中小企業向けの低価格モデルを、期間限定で割り引く。

 NECが打ち出したノートのキャンペーン価格はズバリ5万9850円。HP Miniの標準モデルとまったく同じ値札を付けてきた。

 プロセサに一世代前の「Celeron」を搭載するA4判ノートを通常の14%引で販売する。メモリー容量は512Mバイト、ハードディスクは80Gバイトと最新モデルより見劣りするが、企業での利用にはまったく支障が ないだろう。ただしOSはVistaまたはXPの「Home Edition」である。

 富士通のキャンペーンもA4判ノートを通常の半額近い5万9980円で販売する(図A)。やはりプロセサはCeleronで、OSはVista Home Basicだ。

 両社とも今回の割引キャンペーンとHP Miniの関係は否定する。「これまでも定期的に行ってきたキャンペーン施策の一環。割引率も過去と大きく変わらない」(NEC)という。

 ただ、富士通でパソコンのマーケティングを担当する平野和敏プロジェクト課長は、「キャンペーン価格を決める際にはHPやデルを参考に最安値を決める」と打ち明ける。「エントリー機種は商談のきっかけを作るインパクトが必要」と続ける。

 HP Miniのような超低価格ノートの製品化については、「機能に制約が多いため2台目需要が主体とみている。このニーズに対応する商品は検討中」(NEC)、「検討はしているが、具体的な製品化計画はない」(富士通)というスタンスだ。