ノートパソコンの使いやすさは、ディスプレイの大きさや見やすさ、キーボードの出来などで大きく変わる。

 HP Miniのディスプレイは8.9インチ型のワイド液晶。通常のB5判ノートより高さは3割、横幅は1割ほど小さい。

 この小振りの画面に解像度は1280×768ドット。B5判ノート(1024×768ドット表示)より縦方向に精緻なため、自ずと文字が小さくなる。

 文字の大きさはだいたいB5判ノートの7割ほどだ。見やすさは人によって意見が分かれるところだが、企業のIT担当者からは見づらいという声が多く聞かれた。長時間の使用だと記者にも少々つらかった。

 キーボードの質感は高い。短時間の試用の範囲だが、企業のIT担当者たちの評価も上々だった。

 各キーの大きさ(キーピッチ)は17.5 mmと、デスクトップ用のキーボード(約19mm)と比べても遜色ない。キーを押下した感触(ストローク)も、これまでの低価格ノートと違ってしっかりしている。

 ただ現状のキー配列は英語のみ。記号の位置が日本語配列と異なることは気にとめておきたい。日本HPは「要望が多ければ日本語キーボードモデルを用意する」としている。

 外部インタフェース類は必要にして十分といったところ。USBポートは左右に1個ずつ。PCI ExpressカードやSDカードのスロットを備える。「USBポートがあれば周辺機器の利用はほとんど問題ない」(アステラス製薬の竹沢幹夫コーポレートIT部インフラグループリーダー次長)。

利用シーンが見えづらい
パイオニア 経営戦略部情報戦略グループ副参事 中村正彦 氏
パイオニア 経営戦略部情報戦略グループ副参事
中村正彦 氏
中村氏はインテルのパソコン管理技術「vPro」を社内標準として導入するなどパソコンの先進利用で知られている

 企業で使ってもらいたいという意図が見えづらい。当社の標準ノートは主に技術者が社内で持ち歩くA4判と営業担当者が外に持ち出す軽いB5判の2種類。HP Miniはどちらにも中途半端に感じる。

 例えば営業担当がモバイルで使う場合、バッテリーが問題になる。モバイル用途を目指しているかのような外観なのに、標準バッテリーでの駆動時間が短すぎる。

 重さもネック。実物を手にするまではもっと軽いと思っていたが、イメージが変わった。プロセサ性能は当社社員のモバイルでの使い方を考えると十分だが、これでは使えない。

 デスクトップの代替と考えても、技術者の多い当社にとっては性能が足りない。標準モデルのOSがVista Homeで、XPにダウングレードできないのも疑問だ。

 想定する利用シーンに合わなければ、いくら安くても企業は導入に踏み切れない。キーボードの打ちやすさなど良い点も多いので、今後の熟成に期待したい。