HP Miniに対する企業ユーザーの最大の不満は、バッテリー駆動時間だろう。標準バッテリーだとカタログスペックで2.3時間。新幹線で東京から京都の手前までしかもたない計算だ。

 実際の駆動時間はさらに短い。記者が使用した評価機はフル充電状態から1時間半でバッテリーが切れた。

 最近のB5判ノートは特に長時間駆動をうたっていないモデルでも、標準バッテリーで5時間は動く。HP Miniの物足りなさが目立つ。

 「モバイル志向の製品なのにバッテリ ー駆動時間が短すぎる。これは致命的」。アステラス製薬の塩谷課長は不満を漏らす。

 「せめて4時間。これは企業ユーザーに共通する要求だろう」。パイオニア経営戦略部情報戦略グループの中村正彦副参事は指摘する。「4時間持てば半日外出できる」。

 実は上位モデルに標準で付属する大容量バッテリーを使うと、カタログ上の駆動時間は2倍の4.6時間に延びる。ただし大容量バッテリーは重さも350gと標準バッテリーの2倍。装着時の重さは1.5kg弱となる。

 HP Miniは90分で総容量の90%近くまで充電できる急速充電機能を備える。菊地プロダクトマネージャは「できればACアダプターを携行してほしい」と訴える。

 だが、これも現実には厳しそう。ACアダプターは約280gもあるし、電源コードが意外に太くてかさばる。「そもそも街中に充電できる場所は少ないし、営業担当者が客先で電源を借りるのは無理がある」(アステラス製薬の塩谷課長)との指摘も聞こえる。企業に本気で売り込むなら、バッテリーは要改善だろう。

6万円ノートは「第2世代」へ

 台湾アスーステックが実売5万円の「Eee PC」で切り開いた超低価格ノート市場。登場から1年もたたないうちに早くも第2世代の製品が登場した。

 ここに来てディスプレイの大型化やディスク容量を増加させた新製品を主要メーカーが相次いで発表した(表A)。今夏以降登場する6万円ノートのスペックは、2~3年前の普及モデルに近い水準に達しそうだ。

 米デルは5月末、同社の公式ブログで超低価格ノート「Dell E」の写真を公開した(写真右上)。出荷時期は未定だが、今夏という説が有力だ。

 台湾エイサーは6月、開発中の超低価格ノートPC「Aspire one」の実機を公開した。米レノボも参入の意向を示している。これでHP、デル、エイサー、レノボという上位4社すべてが超低価格ノート市場に参入することになる。

 デルやエイサーの製品はいずれもインテルがミニノートPC向けに開発した新型プロセサ「Atom」を搭載するとみられる。動作周波数は1.6GHzだ。外部記憶装置には4G~12Gバイト程度のSSD(ソリッドステートドライブ)または80Gバイト程度のHDD(ハードディスクドライブ)を採用する公算が高い。

アスーステックも6月2日から、第2世代に当たる新機種「Eee PC 900」(写真左下)を台湾など一部地域で出荷した。7インチ型だった液晶ディスプレイの大きさを8.9インチ型へと拡大、外部記憶装置であるSSDの容量を12G~20Gバイトに増やすなどの強化を施した。

 昨秋に登場した第1世代の初代Eee PCは、液晶ディスプレイが7インチ型と小さい上に、SSDの容量が4Gバイトと限られていた。快適に使おうとすると「Officeなど重たいソフトをインストールしない」といった割り切りが必要で、ヘビーユーザー以外には少々ハードルが高かった。(高下 義弘)

表A●実売5万~6万円の超低価格ノート市場に参入するメーカーの例
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表A●実売5万~6万円の超低価格ノート市場に参入するメーカーの例