一冊の小さな本が,5月以来コンピュータ書のベストの上位を占めて動きません。「たった3秒のパソコン術」(三笠書房 知的生き方文庫)がそれです。

 銀のベタ刷りにスミ文字のタイトル,と渋すぎるくらいの表紙ですが,4月下旬の刊行以来売れています。パソコンで行う面倒な作業が,たった3秒でできてしまう,その方法をご紹介しましょうという内容ですが,文庫で税込み630円という値段と,基本的なキーボード操作についての内容が,幅広い読者層の関心を集めたのでしょう。

 ただ,こういった内容の書籍は,他にも今まで少なからず刊行されています。売り場ではそういった入門的な内容の類書を集めて展開していますが,その中でこの本だけが突出した売り上げを示しています。パソコンの売り場だけではなくビジネス書の売り場でも動いており,全体として見れば,勢いは現在でもむしろ加速していると言っていいと思います。今後どこまで伸び続けるか,注目されるところです。

 成長著しいGoogleについては,さまざまな観点から多くの本が書かれています。その中で現在最も目立って動いているのが「Googleを支える技術」(技術評論社)。ビジネスや,批判,賞賛といった論点とは全く異なり,「Googleという技術」について,詳細に解説したこの書籍は,類書がないという点で注目されています。3月に刊行されてから,「Google本」の中では常にトップの売れ行きを保っています。

 「絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク」(翔泳社)は,書名通り図を多用した内容ですが,専門書です。著者の小田 圭二氏は,ほかにも「絵で見てわかるOracleの仕組み」(翔泳社)などの著書があるように,Oracleで長くコンサルタントとして仕事をされてきました。著者の実体験に基づく解説,ノウハウがシステムの現場の方たちから強く支持されているようです。

 「UMLモデリング入門」(日経BP社)。なんともそっけないタイトルで,本屋としてはもう少し色気をつけてよと言いたくなりますが,色気なしでもちゃんと売れています。UML(Unified Modeling Language)でモデリングする方法を基本から説明と,タイトル通りの内容です。著者,児玉公信氏には「UMLモデリングの本質」(日経BP社)という先行書もあります。また著者は違いますが,売り場では同じ出版社の「UMLモデリングレッスン」と並べて販売,こちらもよく売れております。

 「たった3秒のパソコン術」とは反対に,高くて重くて大きいものでも売れているという例として1冊ご紹介したい本があります。「ビューティフルコード」(オライリージャパン)は,一流のプログラマが文章を寄せたプログラミングについてのエッセイ集。原書の「Beautiful Code」は,Jolt AwardsのGeneral Books部門大賞を今年受賞しています。プログラミングのプロフェッショナルたちが,書名そのままに「コードの美しさ」について熱く語ります。ただエッセイとはいえ,厚くて重くてちょっと高くて,そう手軽に持ち歩ける本ではないと思うのですが,それでも順調に売れているのは嬉しい限りです。またオライリーの本は装丁が面白く,本屋としても売っていて楽しいですね。

 今年はオリンピックも開かれ,書籍では「ハリー・ポッター」最終巻の発売と,出版関係ではビッグな話題もありますが,コンピュータ書の分野に限れば,なかなか大きなトピックがありません。その中でソフトバンクモバイルによるiPhone発売のニュースは大きな話題でした。関連書の刊行企画も次々と伝えられています。その動きについては今後このコーナーでご紹介できればと考えています。